記事登録
2007年03月08日(木) 00時00分

『不招請勧誘』制限を 国民生活センター研究会が報告書 東京新聞

 悪質業者の強引な訪問販売や電話勧誘による消費者被害が絶えないため、国民生活センター(東京)が設置した専門家の研究会は、消費者が求めていないのに業者が勧誘する「不招請勧誘」を制限すべきだとする報告書をまとめた。法律や自治体の消費生活条例に不招請勧誘を制限する規定が盛り込まれるケースが増え始めた事実もあり、今後は不招請勧誘の制限論が一段と強まりそうだ。 (白井康彦)

 研究会のメンバーは四人で、石戸谷豊弁護士(横浜弁護士会)が委員長。訪問販売や電話勧誘に焦点を当てて、昨年三月から検討を進めてきた。

 国民生活センターや各地の消費生活センターには毎年度、訪問販売に関する相談が十万件以上、電話勧誘販売は五万件以上が寄せられている。報告書では、代表的な百三十八の事例を紹介した。

 「訪問してきた業者が無料で床下を点検して『シロアリが出ている』と言って消毒と床下補強工事をした。契約金額は五十万円。必要な工事だったか疑わしい」

 「夜九時ごろに業者が『ふとんのクリーニングをする』と訪問。三時間も粘られ、六十五万円でふとんを買わされた」

 「八十歳代の母親が業者の勧誘電話から商品先物取引を始め、現在は一千万円ぐらいの損失を抱えている」

 こうしたトラブルは不招請勧誘が始まり。報告書は、不招請勧誘でよく見られる問題点として(1)望まない勧誘によって消費者の生活が脅かされる(2)業者が販売目的を隠したり、消費者にとって重要な事実を告げないといったことが多い(3)断りきれないタイプの人や判断力の衰えた高齢者などに集中的な勧誘が行われる−などを挙げる。

 また、不招請勧誘で業者のペースに乗せられて契約してしまうことが多く、クーリングオフ(無条件解約)制度が活用できない場合も多い。こうした事情で不招請勧誘の制限論が出てきた。国民生活センター審議役の島野康さんは「『これなかりせば』の思いが強いのが不招請勧誘」と話す。

 日本では二〇〇四年に成立した改正金融先物取引法が、不招請勧誘禁止の規定を盛り込んだ初めての法律になった。外国為替証拠金取引で消費者被害が多発したのが、この規定導入の引き金。同法成立後は外国為替証拠金取引の被害が激減したので、報告書は「不招請勧誘禁止が極めて有効であることが裏付けられた」と評価している。

 商品先物取引についても国会決議などで「トラブルが解消していかない場合には不招請勧誘禁止を検討する」という方針が示されている。

 自治体の消費生活条例では「消費者が拒絶しているときの勧誘を禁止する」といった形で不招請勧誘を「制限」する規定が目立つようになってきた。東京都、滋賀県、名古屋市などの条例だ。

 報告書は、訪問販売や電話勧誘について法律で不招請勧誘を制限するよう求めているが「健全な取引には例外を設けることも考えられる」と付け加えている。

 関係する業界では不招請勧誘の制限論や禁止論に警戒心が強まっている。日本商品先物振興協会は、顧客トラブルを減少させる取り組みに力を入れて、禁止論が高まるのを抑えていく考え。

 日本訪問販売協会も消費者トラブルを防止するための自主規制を進める方針。消費生活条例を改正しようとする自治体に対して「過剰規制しないように」といった趣旨の意見書を提出している。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20070308/ftu_____kur_____000.shtml