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2007年03月08日(木) 15時02分

<髄液漏れ>東京地検が勉強会 被害者再捜査求める例増え 毎日新聞

 交通事故などで発症するとされる脳脊髄(せきずい)液減少症(髄液漏れ)について、東京地検交通部が先月、専門医を招き、初めて勉強会を開いたことが分かった。「髄液漏れの大けがをしたのに、軽傷事故扱いは納得できない」などと、被害者が再捜査を求めるケースが全国的に増えているためで、検察レベルの具体的な取り組みが明らかになるのは初めて。東京地検は「被害の実態を適切に把握することに役立てたい」と話している。【銭場裕司、渡辺暖】
 勉強会は、事故捜査を担当する一線の検事から「勉強会を開きたい」と声が上がり、先月23日に開催した。約50人が参加し、髄液漏れの研究をしている篠永正道・国際医療福祉大付属熱海病院教授から症状や診断基準について説明を受けた。参加者からは「事故との因果関係をどう立証するのか」「医学界の見解が分かれている理由は」などの質問が相次いだという。
 髄液漏れは、積極的に診断する医師が少ないため、診断された時には既に軽傷事故として加害者が不起訴(起訴猶予)となっていることが多い。このため、「被害の大きさが刑事処分に反映されていない」として被害者が検察当局に再捜査を求める動きが全国で起きている。
 一方で、「軽度のむち打ちで髄液が漏れることは解剖学的にありえない」と主張する専門家も多いため、事故被害の認定が難しい。法務・検察幹部は「むち打ち症や髄液漏れは、『重症だ』という被害者の主張が真実かうそなのかを見極めるのが難しい」との認識を示し、勉強会を今後の参考にするとした。
 髄液漏れは、頭の中などを循環している髄液が体内で漏れて減少することで激しい頭痛や吐き気、めまいなどが起きる。近年は交通事故の被害者が診断されるケースが増えている。
 ◇認定、全国で相次ぐ 東京区検も 
 髄液漏れに伴う再捜査の申請は全国で相次いでおり、昨年は、岡山県の笠岡区検、茨城県の取手区検などで認定された。東京区検でも昨年末、追突事故を起こした加害男性(29)に対し、「被害者に髄液漏れの傷害を負わせた」と認定して業務上過失傷害罪で略式起訴していたことが、新たに分かった。
 東京区検が髄液漏れを被害認定したことが明らかになったのは初めてで、男性は罰金50万円を納付した。事故直後は「むち打ち症の軽傷事故」として不起訴(起訴猶予)にしていたが、被害者側の要請を受けて再捜査し、けがの程度を「加療約624日」と大幅に見直していた。
 事故は05年7月発生。男性は車を運転中、渋滞で停止していた3人乗りの車に追突した。3人はいずれも2〜3週間の軽傷と診断されたが、うち1人は病状が悪化、その後髄液漏れと診断された。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070308-00000073-mai-soci