記事登録
2007年03月08日(木) 00時00分

『鮮人』…判決文に差別表記 原告側抗議 東京新聞

 中国残留孤児が国に損害賠償を求めて敗訴した一月三十日の東京地裁判決で、判決文に「土匪(どひ)」「鮮人」「満人」といった用語が頻出したことに、孤児側弁護団が加藤謙一裁判長(57)に「差別的だ」と抗議、今月二十日に予定されていた同裁判長が担当する第二陣の孤児訴訟の口頭弁論期日が取り消されていたことが分かった。

 同訴訟の次回の期日を決めるための進行協議は八月末まで延期され、審理は今秋以降にずれ込むことが確実となった。弁護団は裁判長の交代を求めており「人格的に信頼できない裁判長に審理されることで、これ以上原告らを傷つけるわけにはいかない」と話している。

 問題となった表現は、判決の日ソ開戦当時や終戦前後の残留日本人の避難状況などについての事実認定で、十カ所以上で使われた。

 「土匪」は、「殺人や略奪をする土着の盗賊団」の意味だが、判決文では「土匪(反日武装集団)のために全滅的な打撃を受け」などと記述された。弁護団は「そもそも現代では使わない不適切な表現の上、日本の支配に対抗して武装蜂起した農民らも含まれ、中国人を蔑視(べっし)する表現」と反発。旧満州(中国東北部)からの日本人の避難状況について述べたくだりでも、日本人女性について「満人の妻になる者が多く子どもを満人に託す者も」「満人、鮮人の協力が得られた」などの表現が続出した。

 「中国人養父母に恩義を感じている原告も多く、差別的表現に傷ついている」と安原幸彦弁護士は話す。こうした表現は、国側が証拠として提出した一九五九年の厚生省(当時)の「満州・北鮮・樺太・千島における日本人の日ソ開戦以後の概況」と題された内部資料の記述と酷似しているという。

 第二陣の訴訟は二次から五次まで千十二人が提訴。四十人が提訴した第一次訴訟で先行して判決が出され、原告側が東京高裁に控訴している。五次提訴まではすべて加藤裁判長が審理している。

■時代錯誤ぶり露呈

 田中宏龍谷大教授(日本アジア関係史)の話 当時の文書を引き写したのだろうが、今では公文書では決して使われない「鮮人」「満人」「土匪」という不適切な言葉が判決文には頻繁に使われている。引き写すこと自体問題だが、裁判官の歴史認識なり言語感覚の時代錯誤ぶりが露呈していて恥ずかしい限りだ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070308/mng_____sya_____008.shtml