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2007年03月08日(木) 00時00分

グーグルに対抗、官民で国産検索エンジン開発読売新聞

「情報大航海プロジェクト」4月にスタート

国産検索エンジンの1つ、MARSFLAGの検索画面(本文とは無関係)。検索結果が画像で表示されるのが特徴だが、ヤフーやグーグルに押されて、市場シェアは小さい

 グーグルに対抗するかたちで、国産の検索エンジンを開発する「情報大航海プロジェクト」が今年4月に始まる。この官民共同プロジェクトは経済産業省の主導で、2005年12月から研究会などの準備が進められてきた。同省は年間50億円の予算を請求しているが、今年度は46億円が認可される見通しだ。3年間のプログラムなので、順調に進めば最終的には150億円程度の予算規模になる。

ネット以外の情報検索も

 この「日の丸」検索エンジン・プロジェクトには、IT産業に詳しい評論家や学者らから懸念が示されてきた。その背景には、過去に失敗した同様のプロジェクトがある。例えば経産省の前身である通産省が1982年に立ち上げた「第五世代コンピュータ計画」である。この計画は、当時、コンピュータ業界で世界制覇を目指していたIBMに対抗する壮大なプロジェクトで、10年間で約500億円の予算をつぎ込んだものの、具体的な成果に乏しく期待外れに終わったとされる。

 これに対し、経産省では「情報大航海はグーグルに対抗するプロジェクトではない」と断ったうえで、その主旨を次のように説明する。

「情報検索では、インターネット以外にもテレビや携帯電話など、やり残している領域が山ほどある。インターネットだけを見て、『アメリカが先行しているから』とやる気をなくす必要はない。日本は特に、電子タグやITS(高度道路交通システム)など、世界でもトップの技術がたくさんある。また画像認識など映像検索の分野でも、日本の家電メーカーは競って研究開発を進めている。これら至る所にある生活情報をつないで検索するとなると、これは日本の勝ちではないか」(経済産業省商務情報政策局情報政策ユニット・情報経済企画調査官の八尋俊英さん)

成果なければ中途でもボツに

 しかし「情報大航海」への懸念は、おそらくその内容よりもプロジェクト・マネジメントに向けられている。つまり税金が適切に使われるのか、という点だ。過去の官民共同プロジェクトを振り返ると、膨大な予算は目覚ましい研究成果を生み出すというより、むしろ「企業や大学が税金に群がる」と見えてしまうのだ。こうした懸念を打ち消すように、八尋さんは次のように語る。

「今は内閣府の下に(専門家で構成される)総合科学技術会議があって、そこがきちんと(企業や大学の)役割分担を決める。昔のように基礎研究で終わってはいけないことになっている。定期的に成果を見て、『これは仕事をしていない』と判定されれば、プロジェクトはボツになる」

 01年1月に設置された総合科学技術会議は、「(国の)科学技術の総合・基本的な政策を立案し、それに関する予算、人材など資源の配分方針を審議する」のが任務だ。科学技術系の予算については、同会議が事実上の決定権を持っているといわれる。つまり財務省も、彼らの判定に従うということだ。

 しかし、この総合科学技術会議にも批判は浴びせられている。例えば同会議がまとめた01年からの第2期科学技術基本計画には総額21兆円の予算が下りたが、これがいったい何に使われたのか、よくわからない。そこから大量の資金が、バイオ産業に流れ込んだといわれるが、その割には米研究機関による遺伝子解析のような目覚ましい成果は報告されていない。

 その一方で、一部研究者に大量の研究資金が流れるなどして、「研究費バブル」と揶揄されもした。 こうした批判を受けて、06年度からの第3期基本計画では、より具体的な成果を求める姿勢を徹底したという。「情報大航海プロジェクト」は、その格好の試金石となるだろう。(小林雅一・ジャーナリスト/2007年2月24日発売「YOMIURI PC」2007年4月号から)

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20070308nt02.htm