記事登録
2007年03月07日(水) 00時00分

「男の子文化」仕掛け30年 月刊誌「コロコロコミック」朝日新聞

 小学館の月刊誌「コロコロコミック」が創刊30周年を迎えた。小学生男子にターゲットを絞り、玩具やゲームのメーカーとタッグを組んでミニ四駆やポケモンなど数々のブームを巻き起こしたマーチャンダイジング(商品化計画)の勝ち組。その歴史は、そのまま「男の子文化」の歴史でもある。

1月に京セラドーム大阪で開かれた「第25回次世代ワールドホビーフェア大阪大会」=小学館提供

30年を記念し創刊される「熱血!!コロコロ伝説」表紙(イメージ)

●メーカーと提携、ヒット続々

 「懐かしい」。ケースの中の創刊号を見て、40代の男性が声を上げた。

 東京都杉並区の杉並アニメーションミュージアムで5月27日まで開催中の「コロコロアニメ歴史展」。マンガ「おぼっちゃまくん」「学級王ヤマザキ」などの原画、ミニ四駆やビーダマン、ベイブレードなどブームになった玩具、30年を振り返る年表などに、親子連れが見入っていた。

 「ドラえもんが読みたくて創刊号を買った」というこの男性は、小学4年生の息子と来場。「この子はベイブレード、上の子はミニ四駆にハマった。いろいろおもちゃをせがまれるが、ゲームばかりするよりはマンガではあっても何か読んでくれる方がいい」

 小学館は30周年を記念し、「熱血!!コロコロ伝説」を5月25日から刊行する。「ゲームセンターあらし」「オバケのQ太郎」「リトル巨人くん」など懐かしのマンガを復刻。77〜96年の人気作を年代順にまとめ、来年1月にかけて全10号を出す。

 「コロコロ」は77年4月、同社の学年誌に連載されていた「ドラえもん」をまとめて読めるマンガ誌として創刊。「ころころと分厚く、コロコロと笑える」が誌名の由来。

 インベーダーゲーム(78年発売)やチョロQ(80年)、ファミコン(83年)など流行の遊びを取り上げた記事や、関連マンガが人気を集め、ブームの火付け役に。メーカーとの連携を深め、94年の第2次ミニ四駆ブームでは、編集者らが新型マシンの企画から関与し、マンガ連載と翌年のアニメ化を主導。「火付け役」から、ブームを作る「仕掛け人」になった。

 96年の発売当初は業界の関心が低かったゲーム「ポケットモンスター」に着目、記事やマンガ、アニメ、イベントなどを展開し、ポケモンと共に「コロコロ」も大ブレークした。「毎号毎号、10万部くらい増えていく。怖いくらいだった」と佐上靖之編集長。

 「コロコロ」が確立した手法はこうだ。様々なメーカーが持ち込む企画から有望なものを選んで編集者が企画にかかわり、子供が好む設定やマンガと連動させやすい要素などを盛る。商品発売に合わせ誌面で独占情報を公開しマンガを開始。遊び方のノウハウを記事やイベントで紹介し、当たればアニメ化でさらに盛り上げる。企画に加わった商品が売れれば、ロイヤルティーなどの形で見返りがある。

 最近の目玉企画は、タカラトミーが4月に発売するカードゲーム「ウズマジン」。3月号で連載マンガが始まった。同じ顔ぶれで送り出したカードゲーム「デュエル・マスターズ」は、累計27億枚を売るヒットとなっている。

 「子供を狙った商売」「創造性を奪う」との指摘もあるが、佐上さんは「ハズした企画がヒットの100倍も200倍もある。子供はシビア」と話す。

 「アンケートで小遣いの額や好きな遊びを聞いてはいますが、僕にとってのマーケティングは、イベントで子供の顔を見ること。どんな遊びを喜ぶのか、肌で知っているのが『コロコロ』の強み」

 小学館グループによるゲームや玩具の大規模イベント「次世代ワールドホビーフェア」は、この冬も全国4会場で27万人を集めた。小売店などでの小規模な催しを含め、編集部員が立ち会うイベントは年50件を超すという。

 とはいえ、子供の世界も雑誌離れが進む。一時は200万部に迫った「コロコロ」も、最近の「マガジンデータ」(日本雑誌協会発行)では、119万部(04年版)から96万部(06年版)に。

 「ニンテンドーDSに子供の時間をとられたかな。ゲームとは協力関係にあるけど、ライバルでもある」と佐上さん。「でも深刻にはとらえていません。雑誌は生き物。ポケモンの時のように、風が吹いて売れる時も、その逆もあります」

◆原点に立ち返るとき

 〈子ども調査研究所の高山英男所長の話〉 ゲームの情報源は攻略本にとってかわられ、ミニ四駆級の強力なおもちゃも出現せず、「コロコロ」はいま頭打ちに見える。出発点の「ドラえもん」はアニメ化で幼児文化に移り、少年マンガ誌は現在、ヤングアダルト向けになった。はざまに抜け落ちた“少年文化としてのマンガ”という「コロコロ」の原点に立ち返ってはどうか。少年マンガ全体の課題でもある。

http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200703070089.html