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2007年03月07日(水) 00時00分

選択の焦点くっきり 知事選朝日新聞

 告示まで2週間となった知事選は6日、2期8年務めた石原慎太郎知事の都政継続を選ぶのかどうかが選択の焦点にくっきりと浮かび上がった。主な立候補予定者では共産党推薦で元足立区長の吉田万三氏、建築家の黒川紀章氏だけでなく、この日立候補を正式表明した前宮城県知事の浅野史郎氏も、透明性の点などで石原都政への批判を鮮明にした。

 3選をめざす石原知事が実績を総括して強調したのが、2月都議会の施政方針演説だ。

 そこでは8年前を「財政再建団体転落の瀬戸際だった」と振り返ったうえで、「時にはトップダウンの手法も交え、国の二歩も三歩も先を行く取り組みを展開してきた」と強調。財政については「土俵中央まで押し戻すことができた」と誇った。ディーゼル車の排ガス規制や新債券市場で中小企業を上場させたことなどを実績として挙げた。

 これに対し、吉田、浅野、黒川の3氏はそれぞれの観点から石原都政を批判している。

 吉田氏は、推薦を受けた共産党が石原知事の高額な出張費や四男の文化事業への関与を批判してきたのに沿って、「都政の私物化、税金のムダ使い」を許さないと強調。石原知事がめざす2016年の夏季五輪招致も、これを契機にした大型開発推進で、福祉が犠牲になっていると主張している。

 浅野氏は6日発表した「緊急提言」に、「私物化・側近政治による都政のゆがみを直し、正常化する」と掲げ、「情報公開制度の拡充」で、都民による監視を制度化することなどを打ち出した。

 かつては石原知事と親しかったとされる黒川氏は、石原都政について「(前回獲得した)300万票の傲慢(ごう・まん)さが出ている」と指摘。「一極集中を招き、東京を金持ちの投機対象にした」と批判し、「経済と文化の共生都市に変えたい」と語っている。

 浅野氏は6日の会見で政策だけではなく、わざわざ「選挙についての基本姿勢」という紙を配った。

 そこでは、「『百円カンパ』による寄付、選挙ポスターの掲示といった協力は歓迎」としたうえで、「こういった協力は、一糸乱れぬ指示・指令体制で行われるのではなく、『勝手連』としてかかわってもらうことになる」と明記した。

 「勝手連」とは通常、候補者の政策や人柄に共感した人やグループが、自発的に応援する選挙スタイルを指す。候補者の側から戦術としてあえて「勝手連」をめざすのは、浅野氏に宮城県知事選での成功体験があったからだ。

 宮城での2期目の知事選で浅野氏は「今まで選挙は政党や団体が仕切り、しらけや政治不信が生まれた」として政党推薦を拒み、当選した。

 会見で都知事選での民主党とのかかわりを問われた浅野氏は、「政党に対して推薦願を出すとある程度お任せになる。『浅野らしい選挙』と矛盾するようになった時、政党とけんかになる。それが嫌なので推薦願は出さない」と明言。政策協定も考えていないという。

 共産を除く主要政党が公認や推薦候補を立てられないなか、こうした選挙戦術がどこまで通用するかも今回知事選の見どころになりそうだ。

http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000000703070001