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2007年03月07日(水) 13時51分

3月7日付・よみうり寸評読売新聞

 〈生体肝移植〉にも、公的医療保険が適用されるものと不適用のものとがある。が、それも「保険がきく」と聞いていた手術の後に、一転不適用とされたら、納得はできまい◆適用、不適用の分かれ目は「3〜5センチのがんが1個、または3センチ以下のがんが3個以内」という適用基準にある。これが明快のようで明快でない◆移植時に基準内の数であれば、よさそうなものだが、移植手術以前に部分切除や電気熱でがんを消す治療が行われていることが多い。消したがんの数もカウントするかどうか。基準には明記されていない◆それで医師の判断と厚生労働省の基準の解釈が違ったりする。生体肝移植は健康な臓器提供者の体に傷をつける。だから安易な実施は禁物で、保険適用にも枠をはめた◆一定の枠はわかるが、あいまいではなるまい。安易な移植を避けるため、まず事前治療を施してがんを消す。それがあだで、いざ移植の際に基準をはずれたでは矛盾だろう◆肝は魂の宿るところ。肝が太い、肝が小さいなどという。予想外に高額な医療費の請求には肝をつぶす。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070307ig05.htm