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2007年03月07日(水) 03時01分

肝移植後に「保険不適用」判断…高額請求続出、断念も読売新聞

 肝臓がんで生体肝移植を受けた後、公的医療保険が不適用と判断され、数百万〜千数百万円の医療費を請求されるケースが相次いでいることがわかった。

 主な病院だけで2004年以降、移植を受けた99人中、18人が不適用となっている。これらの患者に対しては、医師側が手術前に「保険の適用対象」と説明していることから、最終的に医療費を病院が肩代わりせざるを得ないケースが続出すると見られる。専門家は、国の適用基準があいまいなのが原因と指摘しており、患者や家族が6日、厚生労働省に見直しを申し入れた。

 生体肝移植の実施例が多い病院に読売新聞が聞いたところ、04年以降に保険不適用となった患者は、東大病院で37人中6人、岡山大病院で25人中6人、北海道大病院で17人中3人、名古屋大病院も20人中3人。

 大人の肝硬変・肝臓がん患者に対する生体肝移植の保険適用は04年から始まった。厚労省はこの際、保険は原則として、移植後の生存率が高い患者に適用するという方針を取り、国際的基準をもとに「3〜5センチのがんが1個、または、3センチ以下のがんが3個以内」という基準を定めた。

 わが国の肝臓がん治療は肝臓の部分切除のほか、がんに栄養を送る血管をふさいだり、電気熱で焼いたりする治療をまず行うのが一般的。各病院では、肝硬変の進行などによりこれら事前治療では対応できなくなった段階で移植に踏み切ってきた。

 事前治療で消したがんの数も、保険適用を判断する際にカウントするかどうかは基準には明記されていないが、厚労省は「事前治療で何度もがんを消した後の移植の効果は、検証が不十分で、安易に保険適用は認められない」として、原則として過去に消したがんを数えている。

 一方、各病院は「移植の時点で基準内であれば、保険が認められるはず」と反論。不適用とされたケースはすべて、保険審査機関への不服申し立てが行われている。

 各病院とも「最終的に保険が適用されなければ、病院が全額負担せざるを得ない」とする。しかし最近では、トラブルを避けるため、初めから患者に「場合によっては全額自己負担の恐れもある」と通告。この結果、金銭的問題から移植を見送り、その後容体が悪化しているケースが都内などで相次いでいるという。

 日本肝移植研究会会長の門田守人・大阪大教授は「研究会の調査では、事前治療の有無で移植後の生存率に差はなく、厚労省の判断には納得できない。混乱が続くことは患者や家族にとって大きな悲劇で、治療実態に合った基準を明確にするべきだ」と話す。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070307it01.htm