記事登録
2007年03月06日(火) 00時00分

赤字隠し出資募る 平成電電詐欺 投資家らに『黒字』 東京新聞

 通信事業「平成電電」の詐欺事件で、元社長の佐藤賢治容疑者(55)らは、電話事業を始めた二〇〇三年一月期以降、三年続けて赤字だったにもかかわらず、経営状態を隠ぺいして投資家からの出資を募っていた疑いのあることが五日、警視庁捜査二課の調べで分かった。調べに佐藤容疑者は黙秘し、「平成電電設備」と「平成電電システム」の元社長熊本徳夫容疑者(54)は「だますつもりはなかった」と否認しているという。同課は同日午後、関連会社などを家宅捜索するとともに資金の流れの解明を急いでいる。

 同課などによると、平成電電の電気通信事業は〇三年一月期以降、毎年赤字経営が続いていたという。破産手続きの資料では〇五年一月期は百三十二億円の赤字だったとされる。

 しかし、民事再生法適用を申請する直前の〇五年八月ごろ、投資家らに配られた平成電電システムのパンフレットでは、〇三年一月期に六億円の当期利益をあげたと記載。「電気通信事業者として実質初年度決算で黒字計上を実現」と健全性をアピールしていた。

 さらに〇四年一月期も四億三千万円、〇五年一月期にも一億二千万円の当期利益をあげたと掲載した。投資家らによると電気通信事業での赤字は一切説明されなかったという。

 金融庁によると、匿名組合は投資先の営業利益の分配を受けることでは株式投資に似ているが、有価証券を伴わないため、証券取引法で定められた企業情報開示などは求められていないという。

 同課は、佐藤容疑者らが、利率8−10%という配当は最初から無理だったのに新しい匿名組合を次々組んで出資を募集。少なくとも〇五年一月以降に集めた一万三千人からの三百億円については、通信機器の購入には充てず、別の投資家への配当に回す自転車操業を続けたとみている。

 匿名組合 商法に規定された出資契約の形態。出資者(組合員)が利益の配分を受けることを目的に事業者と契約し、資金を提供する。出資者は営業に関与せず、表に出ないで利益の一部を分配金として受け取れる上、リスクは出資の範囲内に限定されるため、資金が集まりやすい。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070306/mng_____sya_____010.shtml