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2007年03月06日(火) 00時00分

猿島の歴史 観光に朝日新聞

  戦時中、東京湾の防空の要だった猿島が、3月末に国から横須賀市に無償で譲渡される。これをきっかけに、観光客を呼び込みたい市は、ユニークな歴史をたどったこの島を紹介するボランティアガイドの養成に乗り出す。島の魅力をどこまでアピールできるか。

(其山史晃)

  猿島は、横須賀沖約1・7キロに浮かぶ。東西約200メートル、南北約450メートルで、外周は約1・6キロ。東京湾内の島は人工島ばかりだが、猿島は唯一の自然島。縄文時代の土器や弥生時代の貝塚なども見つかっている。

  バーベキューや海水浴ができる。周辺には浅瀬が多く、アイナメやカサゴなど釣りを楽しめるスポットも多い。市役所近くの三笠桟橋から連絡船が1日9往復しており、所要時間は約10分だ。

  名前の由来は、白い猿の伝説だ。日蓮が1253年、船で鎌倉に向かう途中に嵐に遭って進路を見失ったとき、船のへさきに白い猿が立ち、この島に導いたという。

  ちなみに、1853年にペリー提督が黒船で来航した際には、自分の名前をとって、勝手に「ペリーアイランド(ペリー島)」と呼んだという話も残っている。

  近代に入ると、「要塞(ようさい)の島」となった。江戸時代末期の1847年、3カ所に砲台が造られた。明治時代中期には艦船攻撃用の洋式砲台が、太平洋戦争前には防空砲台が設けられた。

  島内には、要塞だったころの弾薬庫跡などが点在している。また、建造物に使われているれんがの積み方には国内で残る数少ない「フランス積(づみ)」が見られ、歴史的な価値も高いとされている。

  旧軍港市転換法の適用で島が市に無償譲渡されることになったことを受け、市は猿島を観光客誘致の目玉と位置づけ、02年度以降、約5億4千万円をかけて道などを整備してきた。

  07年度からは、島内の歴史遺産を案内するボランティアを養成する予定で、当初予算案に約112万円を盛り込んでいる。さらに、文化庁に対し、国指定の史跡にするよう申請する予定だ。

  東京湾の事情に詳しい海洋ジャーナリストで市議の一柳洋さんは「自然や歴史について相当の知識のあるガイドを育てないと、リピーターの確保は難しい。シーカヤックで島の周りを回るなど、来てくれた観光客を楽しませる仕掛けづくりの工夫が必要なのではないか」と話している。

  連絡船は11月30日まで毎日発着している。往復で大人1200円、小学生600円。問い合わせはトライアングル(046・825・7144)へ。

http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000000703060003