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2007年03月05日(月) 12時05分

湯沸かし器事故 過半数「使用期間、不明」朝日新聞

 リンナイ製などの小型湯沸かし器による一酸化炭素(CO)中毒事故が相次ぎ問題になっているが、室内で吸排気する「開放式」の小型湯沸かし器で過去約20年間に起きたCO中毒の死亡・重軽傷事故75件のうち、過半数の41件についてメーカー側が各機器の使用期間を把握できていなかったことがわかった。経済産業省は製品の安全基準を強化する方針を打ち出したが、事故が起きやすい古い機種は今も約30万台が出回っているとみられ、古い機種の使用状況の把握が急務になっている。

 機器メーカーの業界団体「日本ガス石油機器工業会」が、各メーカーから報告を受けた過去の重大事故情報によると、CO中毒による死亡事故は46件、重軽傷事故は29件で、計75件にのぼる。このうち、41件については使用期間が不明のままになっている。中古品を購入したり、譲り受けた製品を自分で取り付けたりするケースなどでは、特定が困難なためという。

 開放式の湯沸かし器とストーブは89年に、不完全燃焼が起きた場合に火が消える安全装置の取り付けが義務づけられたほか、01年には安全装置のない中古品について、売買できないように法律で定められた。

 一定の効果はあり、不完全燃焼防止装置付き機器の普及率は06年には都市ガスで97.4%、LPガスで96.0%(開放式以外も含む)にまで上がり、CO中毒による死亡者数も年々、低下した=グラフ(下)。

 しかし、小型湯沸かし器を設置している1100万世帯のうち、まだ30万台が安全装置のない古い機種を使用しているとみられている。

 また、CO中毒事故のうち、使用期間が判明している34件を使用期間別にみると、6割超の21件が10年を超えるなど、古い機種を長期にわたって使う例が目立つ。00年5月に2人が死亡したパロマ製品は約25年間にわたって使われるなど、同工業会が「設計上の目安」とする「10〜13年」を超えているケースが多い。

 あるガス機器メーカー関係者は「『新しい機器を買え』と消費者に強要はできない」と、事故防止策にも限界があると打ち明ける。

 拓殖大学工学部の堀守雄教授(燃焼工学)は「長く使うと、ススの付着や熱による部品の変形などのおそれがあり、リスクは高まる」と指摘。あわせて、住環境の変化で部屋の気密性が高まっており、昔に比べて必ずしも安全な環境といえないとして、「安全装置の技術は向上したが、過信してはならない」と警告している。

http://www.asahi.com/life/update/0305/006.html