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2007年03月05日(月) 10時01分

個人株主独立元年の快挙日刊ゲンダイ

 2月22日、静かな「無血革命」が起きた。舞台はジャスダック上場の新日鉄系電炉メーカー・東京鋼鉄の臨時株主総会。ここで同じ新日鉄系の大阪製鉄との株式交換による合併案が少数株主により賛成3分の2以上という法定要件未遂で否決されたのである。
 否決した理由は単純明快。合併には賛成だが株式交換比率が低すぎるというもの。提案された比率は東京鋼鉄1株に対して大阪製鉄0.228株。
 この比率は合弁当事者が詰めに詰めて決められた。だが、利益率、PER、統合発表後の業績上方修正など、どれをとっても東京鋼鉄側が割負け。それだけではない。通常、被合併会社株主に支払われるプレミアムも株価からみてゼロに等しい。
 これでは一般株主の怒りは収まらない。ネットの掲示板には非難囂々(ごうごう)。これまでならそこでガス抜き、一件落着となった。
 ところが、今回は違った。少数株主側に「白馬の騎士」が現れたのだ。その名はいちごアセットマネジメントというファンド。いちごはこの理不尽さを見て自ら10%株主となり交換比率を0.295株に上げるよう迫ったが応じられず、そこで反対株主から委任状を3分の1以上集め、総会で葬ったのである。
 これは個人株主独立元年ともいうべき快挙である。株主資本主義時代といわれながら、個人零細株主はこれまでは添え物。過去の吸収合併では、コケにされ、泣き寝入りするのがオチであった。特に、親会社が優良子会社を株式交換方式で合併ないし完全子会社化するには、親の威力で子会社を従わせ持参金付きの帰還事例さえ見られた。
 こんな不公正取引を防ぐにはどうしたらよいか。
 問題の核心は株式交換比率の公正さの確保にある。市場取引が基本といっても力関係が違う合併当事者の間では歪みが生じやすい。そこで勝手格付けのような、中立的な第三者による査定ニーズが生まれてくる。
 今回はプロのファンドがたまたまその役割を果たしたが、少数個人株主の権利保全には、いつでも機能する中立的なインフラ機関が欲しいところだ。(藤 正)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070305-00000012-gen-ent