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2007年03月05日(月) 00時00分

東京大空襲 犠牲者悼む集い 今年も 慰霊碑建立から2年 海老名香葉子さんら 公園を行き交う人も足を止める母子像「時忘れじの塔」=いずれも台東区で 東京新聞

 一九四五年三月十日の東京大空襲の犠牲者を悼む慰霊碑を一昨年、台東区の上野の森に建てたエッセイスト海老名香葉子さん(73)らが今月九日、式典「時忘れじの集い」を開く。今年は、都立竹台高校(荒川区)吹奏楽部の生徒たちが式典に参加する。このことを海老名さんは喜び、「時がたっても忘れられない悲しみを、若い世代に伝えていきたい」と話している。 (小林由比)

 海老名さんは国民学校五年生で静岡県に疎開中、大空襲で両親や兄弟など家族六人を失った。

 「どこにもお参りするところがない」。多くの遺体が仮埋葬された上野の地に、碑をつくりたいと長年、奔走。一昨年三月、JR上野駅北側の寛永寺現龍院の敷地に慰霊碑「哀しみの東京大空襲」を、上野公園いこいの広場に、母子像「時忘れじの塔」を建てた。

 昨年の一周年式典にも多くの人たちが参列した。年々、高齢化する被災者や遺族たちは、今も碑の前で涙を流し、手を合わせている。

 この一年間にも、海老名さんの元には全国の遺族や被災者から「行って手を合わせることができました」という電話や、「体が動かず行けない。お花を供えてあげてほしい」とお金を添えた手紙などが多数届いている。

 「『おやじやおふくろが死んだんだ』って、七十代、八十代の人たちが泣くんですよ。いくら時がたっても忘れられるものではないんです」

 海老名さんは昨年、政府の教育再生会議の委員に起用された。家庭や地域で「親孝行の子を育てよう」と、会議で訴えている。親や兄弟を戦争で亡くした遺族の姿に触れることが、子どもたちの心をはぐくむことにもつながると感じている。

 「そのためには、身をもって体験した人が話していくしかない。体験を語ることはつらく苦しいけれど、涙を流してもいい、私たちが伝えていかなくては」。今年も「哀しみの日」を前に、海老名さんは思いを新たにしている。

 今回、参加する竹台高校吹奏楽部は、都吹奏楽コンクールA組の部で三年連続金賞を受賞している実力校。慰霊碑のある寛永寺現龍院が近くにあり、学校側から参加の申し出があったという。

 式典は、午前十時から慰霊碑前で、同十一時半から母子像前で、それぞれ開かれる。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tko/20070305/lcl_____tko_____000.shtml