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2007年03月05日(月) 00時00分

若者狙い 携帯活用 商店街で『選挙セール』 東京新聞

 投票した人には割引します−。こんな「選挙セール」が行われる商店街が、統一地方選で全国に広がるかもしれない。

 選挙セールは、政策立案などを手がけるNPO法人「一新塾」(本部・東京)のメンバーが発案。投票所で投票済み証をもらい、選挙セールに賛同している商店街に持って行くと、割引サービスが受けられる仕組みだ。

 二〇〇三年十一月の衆院選で、愛知県刈谷市の商店街が初めて取り入れた。翌〇四年七月の参院選では、東京都新宿区の早稲田商店会など五十カ所に広がり、話題になった。

 早稲田商店会の場合、対象となった投票所の投票率は前回より5ポイントアップ。商店会長で、今は自民党衆院議員の安井潤一郎氏(57)は「選挙の日、普段は一人で行くそば屋に家族連れで行ってもらえれば、売り上げも上がる」と力説する。

 商店街は若者の客の減少に悩んでいる。選挙も若者の投票率が低い。共通の問題を抱える二つが手を組むことで、双方が新しい「顧客」を開拓できる、という発想。マニフェスト選挙を進める意味でも、有権者に投票動機を与えることは有効な手段だ。

 ただ、この選挙セールには難点もある。投票を済ませた有権者が、投票済み証をもらう必要があることだ。同証は、投票のため会社に遅刻してしまう場合などに、選挙管理委員会が便宜的に発行しているもので、あまり知られていない。すべての有権者にとなると、選管にとっても事務が煩雑化し負担増になる。

 この問題が、選挙セールを爆発的ブームに押し上げない一因でもある。「五十カ所に広がった」といっても、全国に約一万三千もある商店街の0・4%にすぎない。

 ただ、一新塾の選挙チームは、既にその問題の解決策も「開発」している。QRコードを利用する方法だ。QRコードとは、携帯電話で撮影すると直ちに情報を読み取れる白と黒の模様のこと。

 商店街が、投票所にQRコードつきの「選挙セール」ポスターを張る。有権者は投票の帰りに、QRコードに携帯電話をあてて「カシャッ」とする。それが投票済み証の代わりとなり、選挙セールを行う商店街の情報も分かるシステムだ。

 一新塾は、各地の商店街や商工団体に選挙セールの展開を呼び掛けるとともに、同塾のウェブサイトで専用のQRコードを無料で提供していく予定。選挙チームの渡辺雅則さん(58)は「携帯を使うのを面白いと思って、若者や浮動層が投票してくれるのを期待している」と話す。

 選挙セールは公選法の買収に当たるのではないか、との指摘もある。これについて、総務省選挙課は「特定の候補者を当選させる目的でない限り、選挙の啓発につながるので問題はない」としている。

 投票率をどのくらい底上げできるか、同時に、商店街活性化は図られるのか−。QRコードと選挙セールの効果に注目したい。 (大杉はるか)


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20070305/mng_____sei_____001.shtml