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2007年03月04日(日) 00時00分

オタク向けで勝負 立川の地場デパート朝日新聞

 「オタクの聖地」と言えば、秋葉原や中野のブロードウェイが有名。そこに、立川も第三極として名乗りを上げている。JR立川駅近くの第一デパートにはフィギュアを製造・販売する壽屋の1号店があるほか、フロム中武もフィギュアやアニメを扱うテナントを入れている。両店とも現在地で創業。伊勢丹や高島屋、ルミネといった大型店が立ち並ぶ小売りの激戦区で、「専門化」で対抗している。(大隈崇)

 ゲームやアニメの美少女キャラクターをかたどったフィギュアがずらり。第一デパート3階にあるコトブキヤ立川だ。会社名は壽屋。秋葉原などにも店舗を構え、欧米の即売会にも出展するなど、「その道」では有数の企業だ。

 その壽屋と第一デパートは切っても切れない間柄にある。

 48年にひな人形や玩具を扱う店として立川駅北口に創業した壽屋は64年1月、大量の燃料を積んだ貨物列車が暴走して起きた駅周辺を巻き込む大火災で、店舗を焼失。3年後、その跡地の再開発で生まれたビルが第一デパートで、運営会社の初代社長は壽屋の創業者だった。

 第一デパート内で再出発した壽屋は80年代半ばにプラモデルを自社制作し始めると、95年、社会現象にもなったアニメ「エヴァンゲリオン」のフィギュアを手がけた。これが決定的な転機になり、「美少女フィギュア」を数多く発表するように。

 宣伝チームの森英昭係長は「オタクに合わせるというより、社員が好きなものを発信している」と話す。

 そして、壽屋の存在が第一デパートの性質を決めていった。自然とマニア的な志向を持つ人が集う場所になり、そうした人を対象にした店が出店するようになる。

 駅周辺に5店舗を構えるオリオン書房は、第一デパート内の店内のほとんどを漫画、アニメ、鉄道と軍事関連の書籍が占める異色の店舗にした。

 高田鉄専務は「そこにある空気みたいなものを含めて考えた結果。レアなものはたとえ単価が高くても売れる。立川でも専門書店が成り立つ」と話す。

 第一デパートを訪れる人は、他の百貨店などと比べれば格段に少ない。半面、ウインドーショッピングの客もいない。目的をもった人が訪れる場所になっており、第一デパートの堀田尚彦支配人は「入ったお客は必ず買って帰るので、客が少なくてもがんばっていける」と話す。

 一方、「立川ばっかり」などと大きく掲げた奇抜なキャッチコピーが目を引くフロム中武。こちらは戦略としてマニア向け店舗を進出させている。

 62年のオープン。屋上に遊園地を構えたり、全国チェーン店が多く入ったりと当初は典型的な百貨店だった。だが、ルミネなどがオープンすると、資本力の違いもあって売り上げが減少。「同じ土俵で勝負しては勝てない」と個性を前面に出す戦略に転向した。服飾であれば中学生や中高年と、他の百貨店とは異なる客層を意識している。

 個性的な店作りの一環が、オタク向けテナントの出店だ。フィギュアの製造販売で有名なボークス(京都市)が06年6月に7階に出店。開店日には数百人の行列ができたという。4階でアニメ関連商品を手広く扱う「アニメイト」も同9月に約1.5倍に増床した。

 ただ、「オタク向けビル」にすることは考えていないという。中武ビルディング営業本部の浪江崇等課長は「あまりマニアックな店ばかりになって一般のお客様が入りづらくなっては本末転倒。『面白さ』で興味を引きながらも、気軽に訪れられる店を目指したい」と話す。

http://mytown.asahi.com/tama/news.php?k_id=14000000703050004