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2007年03月03日(土) 14時33分

無契約眼鏡店が視力検査、営業活動も…市立川崎病院読売新聞

 川崎市川崎区の市立川崎病院(秋月哲史院長)の眼科外来で、民間眼鏡店チェーンの店員が、市と契約を結ばないまま20年以上にわたって交代で患者の視力検査を行い、病院側からカルテも渡されていたことが3日、わかった。

 店員は、病院内で患者の眼鏡を受注する営業活動もしていた。病院側は昨年2月の段階で、問題であるとの認識を持っていたが、今年1月に川崎市の定例立ち入り検査で発覚するまで、検査室への店員の出入りが続いていた。市は「個人情報であるカルテを外部の業者が見られる状態にしたり、院内で営業活動をしたりするのは不適切」として、店員の出入りを禁止、経緯などについて調査を始めた。

 店員を派遣していたのは、首都圏に25店舗を展開する「オグラ」(本社・東京都千代田区)。

 同病院によると、店員は平日の午前中、白衣姿で外来の検査室に入り、医師の指示を受けながら、多い日は約40人の視力を測定していた。さらに、看護師らが店員に患者のカルテを渡し、店員は検査結果をメモにしてカルテにはさんでいたという。

 また、眼科医師は、眼鏡業者の紹介を希望する患者に「(店員がいる)検査室の前に行ってください」と紹介。オグラは、少なくとも月数人の患者から眼鏡を受注していたとしている。病院は、こうした検査が20年以上続いていたことを認めている。オグラとの間で検査料などの支払いはなかったという。

 自治体病院を管轄する総務省地域企業経営企画室は、「個人情報の取り扱いなどを定めた契約も結ばないまま、民間業者が入っていたことは論外」と指摘。市幹部は「(カルテを渡すなど病院側の行為は)医師や地方公務員の守秘義務を定めた刑法や地方公務員法に抵触する恐れもある」としている。

 病院事務局は昨年2月には実態を把握したとしているが、その後も「急に出入りをやめさせると、検査員の手当てがつかない」として店員による検査を容認。昨年11月になって国家資格を持つ視能訓練士を臨時採用したが、眼科は「訓練士の手が足りなくなると困る」との理由で、店員による検査をやめなかった。

 一方、市は長期間、実態を把握できず、今年1月、市地域医療課が年1回の定例立ち入り検査をした際にようやく発覚、病院に改善を命じた。

 秋月院長は「公立病院として患者の信頼を失いかねないことで、非常に不用意だった」と陳謝。病院事務局は「視能訓練士を採用後は、店員は出入りしていないと思っていた。確認が甘かった」と釈明している。

 一方、オグラ営業部は「慣習的に派遣しており、社会奉仕の面もあった。店員はカルテを受け取っていたが、内容は見てはいない」と説明している。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070303i106.htm