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2007年03月03日(土) 10時00分

日興 損害賠償30億円で幕引き図る茶番劇日刊ゲンダイ

「有村(前社長)ら旧経営陣の刑事告訴をしないのか」
 日興コーディアルグループ(CG)内部から大アマの決着を知ってこうした怒りが沸き起こっている。利益水増し不正会計問題を追及した現日興経営陣だったが、結局、頭目とされる有村純一前社長ら旧経営陣の刑事告訴をあっさり見送り、31億円の損害賠償請求でお茶を濁す格好となった。
「桑島正治日興CG社長は有村前社長ライン。落としどころありきの処分はミエミエでしたが、あまりにお粗末」(日興関係者)
 27日に開かれた記者会見でも、桑島社長は自らが委員長を務める責任追及委員会の報告として、「調査の結果、新たな不正は発見されなかった」と発表。証拠隠滅のために電子メールを消したとされる平野博文前NPI社長の疑惑についても「復元したメールにも新たな不正の事実はなかった」とサラリとしたもの。刑事告訴を問われると「必要な証拠が揃わず難しい」(太田洋弁護士)と付言した。難しいことは最初から分かっているわけで、そこを突くのが現経営陣の役割なんじゃないのか。やる気を疑いたくなる。

 こんな調子だから損害賠償請求額の根拠もいい加減だ。日興は「国へ支払う課徴金や監査法人への報酬、弁護士費用などの積み上げ」というからアングリ。本来、含まれるべき日興ブランドの毀損や株価下落などによる損失が除外されている。これには「具体的な金額を求めることは難しい」「対象者の資力を鑑みて判断した」(いずれも日興広報担当)と逃げの一手。
 だが、本当か。これには異を唱える日興関係者が多い。
「有村前社長の資産は、業績連動による報酬と、ストックオプション(自社株購入権)を合わせて総額40億円にのぼることがグループ内で半ば公然と語られている。また、有村前社長のやりたい放題ぶりはつとに有名で、六本木の豪華マンションを社宅用として知り合いの不動産業者から買って、調度品まで会社持ちにしている話もそう」(日興OB)
 聞けば、今回の31億円の賠償は有村前社長だけじゃなく、財務担当の取締役だった山本元氏、平野NPI前社長ら計3人に求めているもの。2人の役員も相当の資産を得ている。
「こうした巨額の資産は利益水増しの粉飾決算で手にしている。この程度の額は“かすり傷”」(日興グループ社員)
 この日、東京証券取引所の西室泰三社長は、日興の損害賠償請求によって「虚偽記載の程度が軽くなるわけではない」と記者団に説明した。旧経営陣の“呪縛”にとらわれた決断が上場廃止を防ぐことになるとはとても思えない。

≪日興株価ストップ安!≫
 上場廃止へのカウントダウンが始まったか。
 28日の日興コーディアルグループ株価は、「東証が上場廃止に向けて最終調整に入った」という一部報道を受けて、寄り付きから売り注文が殺到。一時ストップ安の1147円を付けた。東証の前場終値は前日比197円安の1150円と若干戻したものの、今後の行方は楽観できない。
 市場関係者からは「上場廃止になれば株価下落は避けられないと判断した個人投資家の動き」「株価指数連動で運用しているファンドなどによる売却を意識した売り注文が出た」との声が聞かれた。ただ、日興を巡っては、米シティグループや、みずほコーポレート銀行からの支援などを受ける可能性もあり、「現在の企業価値を下回れば、買いに入る」との見方もある。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070303-00000012-gen-ent