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2007年03月03日(土) 00時00分

書店競争激化は必至 金沢に新たな大型店朝日新聞

◆「体力なければ撤退」◆
=地元老舗、改装などで対抗=

 金沢市への大型書店の出店ラッシュが止まらない。県外資本が目立ち、売り場面積はいずれも1千平方メートルをゆうに超す。江戸時代に“天下の書府”と呼ばれた地ではあるが、「すでにオーバーストア」という声も強く、競争激化は必至だ。

 明文堂書店(富山市)は6月に金沢市鞍月5丁目の県庁近くに、売り場面積約4200平方メートル、蔵書80万冊の新店舗「金沢県庁前本店」をオープンさせる。2日、市内のホテルで会見した清水満社長は「日本最大級の売り場です」と胸を張った。

 3階建てで、3階には絵本、児童書などを幅広く備えた「絵本館」を設ける。子どもの遊び場もあり、家族連れを呼び込む計画。営業時間は午前7時〜午前2時で、出勤前のサラリーマンも標的とし、年間売り上げ目標は15億円。

 同書店は05年12月の能美店を皮切りに、県内で次々と店を開き、金沢県庁前本店は4店目となる。金沢に大型書店の進出が相次いでいる点について、清水社長は「金沢でやりたいという思いがたまたまぶつかってしまったんではないか。金沢にはパワーがある。そのパワーに挑戦したい。勝算は十分ある」と自信をのぞかせた。

 文苑堂書店(富山県高岡市)も昨夏、書籍売り場だけで約1800平方メートルの示野本店を金沢市示野町に出店した。同店を含め市内に4店舗を構えているが、吉岡隆一郎社長は「林立状態も想定済み。北陸において金沢の市場は魅力。競争激化は避けては通れない」と話す。

 いまじん(愛知県豊山町)は05年11月、山側環状線沿いに売り場面積3千平方メートルの大桑店を出店し、金沢の大型店進出の先がけとなった。同社経営企画室は「正直、ここまで出店が増えるとは思わなかった。現状は供給過多。いずれ体力のない企業は撤退せざるを得ないのでは」。06年3月に「香林坊109」に売り場面積約1300平方メートルの店舗を出した中田図書販売(富山市)の田畑豊業務部長も「郊外と中心部では客層は違うが、金沢は完全にオーバーストア状態。お客様に支持される店を作らないと淘汰(とうた)される」と警戒感を強める。

 こうした状況に、地元の老舗(しにせ)書店、うつのみや(金沢市)も対抗策を打ち出している。昨年5月に柿木畠本店を大幅に改装したほか、3月からはタッチパネルでどの本がどこにあるか一目で分かるシステムを導入する。裏谷重成専務は「安穏としておれない。地元の書店として、外商を強化し、地域とのつながりを深くするなどのサービスを充実してカバーしていきたい」と話す。

 相次ぐ県外資本の金沢進出について、北陸経済研究所(富山市)の山口英男・主任研究員は「個人的見解だが、北陸の商圏を比べた時、どうしても金沢の商圏は厚みがある。富山資本を中心に強まっている金沢流入は当分は続くのではないか」と指摘する。

http://mytown.asahi.com/ishikawa/news.php?k_id=18000000703030001