記事登録
2007年03月02日(金) 00時00分

模倣超えた個性で世界に ポリシックス朝日新聞

 つなぎに黒いサングラス。ステージに上がる時はいつも、このいでたちだ。繰り出される音は、「ピコピコ」と表現される電子音と猛烈なバンドサウンドが溶け合う。シュールで無機的な雰囲気の日本人4人組が、欧米でも注目を集めつつある。

 このスタイルに既視感を覚えた方がいたなら、70年代後半にはやり、「ニューウエーブ」と呼ばれた音楽がお好きだったのでは?シーンを代表する米国バンド「DEVO(ディーボ)」をまねたのが、バンドの始まりだった。

 リーダーのハヤシがディーボを知ったのは中学生のころ。気弱そうな男たちがそろいのつなぎを着て、ロボットのようにぎくしゃく動く——そんな映像に衝撃を受けた。長髪や革ジャンに象徴される悪ぶったロックに共感できなかった少年は「普通の人が持つ狂気ほど恐ろしいものはない」と感じた。

 シンセサイザーを基軸にしたニューウエーブ音楽と、客に向かってパンを投げるといった型破りなステージが話題となり、00年にメジャーデビューを果たした。しかし、間もなく迷いが生じる。キワモノ的なイメージで注目されてはいても、自分が生まれたころに流行した音楽が、どれだけの人に受け入れられるのか、と。

 転機となったのは、03年の米国巡演だった。前座という立ち位置で、劣悪な環境のなかにありながら、自信を取り戻すことができた。「日本のロックは、何かを代弁したり応援したりする『言葉』が結局、重要視される。米国では、そうではない自分たちの音楽に、音を鳴らすだけで反応が返ってきた。間違っていなかったと思えた」

 その後、定期的に英米ツアーをするようになり、年間30本以上の海外公演をこなす。ベースのフミが「生身で勝負している」と言う海外での経験は、バンドの実力を着実に高めた。

 人工的なシンセサイザーに、攻撃的なギター、ベース、ドラムがからむ。調子外れのハヤシの絶叫に、キーボードのカヨのかわいらしいボーカル、ボコーダーと呼ばれる声質の変換機器が生み出すロボットのような声も飛び交う。誇張された異質な諸要素が、ねじれたポップセンスで束ねられる。

 新作はそんな現実離れした世界を存分に見せつける。ハヤシは言う。「ニューウエーブのスタイルではなく、聴いている人を驚かそうという、その精神を持ち続けたい」

   ◇   ◇   ◇

 〈POLYSICS〉 97年に結成され、00年にメジャーデビューした。現在のメンバーは、ハヤシヒロユキ(ギター)、カヨ(キーボード)、フミ(ベース)、ヤノ(ドラム)で、いずれも20代後半。新作を携えてのツアーは4月から。東京公演は6月2日の日比谷野外音楽堂。新アルバム「KARATE HOUSE」を2月末に発表。

http://www.asahi.com/culture/music/TKY200703020260.html