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2007年03月01日(木) 00時00分

【関連】『大半、必要な人なのに』 中古での購入 安全管理に難 東京新聞

 要介護度が軽い高齢者への利用制限で、介護保険による貸与が急減した介護ベッド。「必要ない人が使っている」と保険給付費削減の“標的”にされたが、現場では「大半は必要な人で、現実は“貸しはがし”だった」との声が目立つ。借りられなくなった人の多くは貸与ベッドを中古品として買ったとみられるが、「高齢者の所持品になってしまうと保守管理がなされず、事故が起きる可能性が高まる」との懸念も広まっている。 

 厚生労働省のまとめでは、要支援と要介護1の人に対する一昨年十一月の保険請求審査(前月の実績を反映)の介護ベッド貸与件数は合計二十七万八百二十件。利用制限の制度改定が本格施行された直後の昨年十一月審査分では、約十九分の一の一万四千百七十七件に激減した。

 介護ベッド貸与が認められる人は「自分で寝返り、起き上がりができない」人に限定される。認定調査は同省作成の調査員テキストに沿って行われるが、畳の上で起き上がれなくても、その時使っていたベッドの柵をつかんでできれば「できる」と判定され、貸与は不可となるという。

 東京都大田区の福祉用具貸与・販売会社によると、中古品として売られたベッドは六万−十二万円。金銭的な余裕がなくビールケースに板を敷いて“自作”したお年寄りもいたという。同社の福祉用具専門相談員の男性(44)は「経過措置が切れる寸前まで多くの人が借りていた実態を見ると、ベッドが不必要だった人は一割もいなかったと思う」と指摘。同省が利用制限の緩和を表明したことについて「失策を認めたようなもの」とした。

 一方、貸与業者はベッドの保守管理を担当し、ガイドラインでは半年から一年に一回行うとされている。関係者によると貸与中のベッドを売って廃業した業者が少なくないとされ、保守管理は利用者任せが実態という。

 利用制限で大量の中古ベッドが出回った介護現場には、「モーターの不具合が起きると体の一部を挟まれるなど、事故の危険が高まる」との声が出始めており、介護ベッド製造大手パラマウントベッド(東京)の広報担当者は「保守管理は重要で、おろそかになると心配だ」と話す。

 相談員の男性は「介護現場では想定外の使い方をされる場合がある。お年寄りが使う機械で、保守管理がされないのは危険。事故が起こってからでは遅い」と警告する。

■要介護度だけで判断できぬ

 高齢者生活福祉研究所(東京)所長で理学療法士加島守さんの話 介護ベッドの目的は寝返り、起き上がり、立ち上がり動作の補助。給付制限で保険からの支出削減には効果があったかもしれないが、ベッドの柵などにつかまらないとこれらの動作ができない人から貸与ベッドを奪う結果になった。要介護度が2から1になっただけでベッドを借りられなくなった事例もあり、要介護度だけでは必要性の判断はできない。厚生労働省が給付制限を緩和するが、ベッドの必要性を判断するのに、医師だけでなく、ケアマネジャーや看護師などとの綿密な担当者会議がより重要になる。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070301/eve_____sya_____006.shtml