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2007年03月01日(木) 13時26分

「談合の基本構造認識」佐藤工業前会長実刑朝日新聞

 −佐藤工業前会実刑「態度、反省見えず」−

「被告人の態度からは真摯(しん・し)な反省の情がまったく見て取れない」——。県発注の流域下水道工事を巡る談合事件で、東京地裁の小池勝雅裁判長は28日、県内建設大手「佐藤工業」の前会長佐藤勝三被告(67)に対し、懲役6カ月の実刑判決を言い渡した。佐藤前会長は判決を不服として控訴する方針。

 小池裁判長は「佐藤前会長が価格調整自体には直接関与せず、入札価格や具体的な談合の内容について知らなかった」と指摘。だが、長年にわたって県内で談合が繰り返されており、前会長が佐藤工業の社長や県建設業協会の会長として過去に談合に関与した点を重視し、「具体的な手順はともかく、談合の基本的な構造は認識していた」と結論づけた。

 また、前会長はこれまでの公判で、東急建設東北支店元副支店長の門脇進被告(63)競売入札妨害罪で執行猶予付き判決や、前知事支援者で設備会社社長の辻政雄被告(60)同との共謀を否定してきた。しかし判決は、「業務担当の部下に指示したり報告を受けたりして自分のために利用しており、共謀共同正犯にあたることは明らか」とした。

 同事件の一連の公判では初めてとなる実刑判決の理由について、小池裁判長は、佐藤前会長の公判での態度を挙げた。前会長が公判で、「談合にあたるかは裁判所に判断して欲しい」などと述べた点に触れ、「部下の責任を認めながら、自らの責任についてはあいまいな供述をしており、こうした態度からは反省の情を見てとれない」と指摘。

 「責任の重さを自覚させるためにも、安易に執行猶予することは相当でない」と結論づけた。

 判決を受けた佐藤前会長は保釈を申請し、保釈金1200万円で即日保釈された。保釈後、東京地検の前で報道陣に囲まれた佐藤前会長は、「まさか実刑とは思わなかった。判決には間違っている点が多く、当然控訴する」と話し、判決への不満をあらわにした。

 −有罪確定すれば営業停止−

 佐藤工業の前会長に対する実刑判決は、県内の建設業界の低迷に拍車をかけそうだ。判決にかかわる不正行為があった当時、同社の代表権を持っていた前会長の有罪が確定すれば、国交省の基準で90日以上の営業停止処分を受けることになる。

 同社に対しては、県が昨年9月、9カ月間の指名停止処分としたほか、郡山市(9カ月間)、福島市(6カ月間)、国土交通省の各地方整備局(3カ月間)などが指名停止にしている。

 県建設業協会の鈴木哲夫専務理事は「下請け業者など取引先が多数に渡るため、地域経済に及ぼす影響は大きいだろう」としている。

 同社は05年度、売上高にあたる完成工事高が県内1位で、従業員約150人、下請けなど取引のある業者は約300社に上る。

 同社は「自治体の指名停止を受け、民間分野の営業に力を入れ、従業員数もできるだけ削っている」としている。

http://mytown.asahi.com/fukushima/news.php?k_id=07000000703010006