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2007年03月01日(木) 00時00分

大和市に賠償命令 地裁判決朝日新聞

  大和市立病院で97年2月、仮死状態で生まれた男児(10)が重い障害を負ったのは、医師の判断ミスで帝王切開が遅れたためだとして、東京都に住む男児と両親が大和市に約1億9200万円の賠償を求めた訴訟で、横浜地裁は28日、市に約1億4200万円の支払いを命じた。三木勇次裁判長は「早期に帝王切開をしていれば、障害を発生させなかった」と述べた。市は控訴する方針。

(岩波精、渡辺丘)

  判決は、男児の心拍数が低下した時点で、医師は帝王切開の準備に着手すべき義務があったのに怠ったと認定した。その後も、速やかに帝王切開をして男児を娩出(べんしゅつ)させなかった過失があるとした。

  判決によると、当時は夜間だったため、病院に麻酔科医や手術室看護師は常駐していなかった。医師が帝王切開を決めてから麻酔科医らを呼び出すなどの準備作業に取りかかったため、娩出までに時間がかかったと三木裁判長は指摘した。

  市は「娩出までの所要時間は夜間としては平均的で、他の一般病院でも同様だ」と主張していたが、三木裁判長は「遅きに失した。危険な状態と判断される際には、速やかに帝王切開に着手できるよう準備しておくべきだった」と述べ、市の主張を退けた。

  また、男児の状態についても「緊急の帝王切開をすべき所見が現れており、緊急性がなかったとは言えない」と指摘した。

  その上で三木裁判長は、男児は母体内で低酸素状態になっていたのに、医師が速やかに娩出しなかったため低酸素脳症が引き起こされ、手足のまひやてんかん、発達遅滞などの重い障害が残ったと結論づけた。

  判決を受けて、市立病院の大宮東生院長は記者会見し、「胎児の心拍数に緊急性を示す異常は見られなかった。分娩(ぶんべん)管理に問題はなかったと考える」と述べ、近く東京高裁に控訴する方針を示した。

http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000000703010002