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2007年02月28日(水) 00時00分

調布市が謝罪 和解へ シックスクール訴訟朝日新聞

 新校舎に残留した有害化学物質で「シックハウス症候群」を発症したなどとして、調布市立調和小学校に通っていた子ども4人が市を相手に計2千万円の損害賠償を求めた訴訟で、同市の長友貴樹市長は27日の記者会見で、原告と和解に合意したことを明らかにした。市が、健康被害を発生させたことやその後の対応で不信感を与えたことについて謝罪し、和解金計460万円を支払う。(比留間直和)

 和解の内容にはほかに、市のシックハウス対策のマニュアルに実効性をもたせることも盛り込まれた。これを受け市教育委員会と原告との間で、両者がマニュアルの細則づくりに協力して取り組むとの確認書が交わされた。市は3月定例市議会に関係する議案を提出する。

 訴状などによると、市内の2小学校が統合して99年に開校した調和小は、02年9月から新校舎を使い始めた。市は直前の調査で、教室内などで化学物質のホルムアルデヒドやトルエンが基準値を上回っていることを知りながら、公表せず使わせたという。

 その結果、当時5年生と2年生だった原告らは、頭痛や鼻血、極度の倦怠(けん・たい)感、目の充血、視力低下、皮膚炎などを起こし、別の学校への一時避難や転校を余儀なくされた。翌年原告のうち2人が調和小に戻った後の学校側の対応も配慮に欠け、症状が発生したり精神的苦痛を受けたりしたという。

 同裁判は04年6月、原告が地裁八王子支部に提訴。市側は「医学的因果関係が不明」などとして訴えの棄却を求めてきた。

 同校の化学物質は、現在は基準値以下に収まっているという。

 長友市長はこの日の会見で、「前途有為な方々が対象であり、一刻も早くこういう日を迎えたいと念願してきた」と述べた。

 シックスクール問題の発生から4年半。保護者たちは、対策強化と周りの理解の必要性を訴える。

 中3女子の母親(46)は、「高校進学と同時期の和解で、節目としてはよかったかも」と語る。

 02年9月、5年生だった娘は、新校舎に入るとまもなく頭痛やのどの痛みなどを訴えた。翌月にはひどい脱力感で動くこともできない症状が繰り返し出たため、別の市立小やフリースクールに通わせた。6年進級時に調和小に戻ったが、その後も教師の化粧品や各種教材、プールから揮発する塩素などに反応して具合が悪くなったりした。

 今も新築や改築されたばかりの建物は避けている。高校選びにも苦労した。校舎を改修したばかりや、改修予定がある学校は選択肢から外した。

 中3と小6の姉妹の母親(47)は、「和解で終わりにしてはいけない」と話す。当時2年生だった下の子が転校した小学校では、使う教材について事前に相談してくれるようになったという。

「誰もが一緒に授業を受けられるよう工夫する。それが当たり前の社会になってほしい」

http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000000702280001