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2007年02月27日(火) 00時00分

中皮腫死亡増加の一途朝日新聞

   横浜市鶴見区のアスベスト(石綿)建材工場跡地の周辺で、石綿による健康被害が住民に広がっていることが分かったが、厚生労働省の統計によると、石綿が原因とされる中皮腫による死亡者数は年々増加している。県内でも同じ傾向にあり、05年には95年の倍以上の80人が亡くなった。

(太田泉生)

  厚労省の人口動態統計概況によると、県内の中皮腫による死亡者は95年が38人、03年は65人、05年は80人だった。

  また、環境省の検討会資料で示された95〜04年の市町村別死亡者は、横浜市が198人、横須賀市76人、川崎市が70人だった=表参照。

  中皮腫は、胸膜や腹膜にできる悪性の腫瘍(しゅよう)。厚労省の検討会報告書によれば、複数の研究で中皮腫患者の8〜9割が石綿を吸い込んでいたことが確認されており、石綿以外が原因で発症するケースは極めて少ないと考えられている。石綿を吸い込んでから30〜40年たって発症するとされる。

  石綿の輸入のピークは74年。建物の断熱材、保温材やスレート、自動車のブレーキなどに使われたが、70年代から製造・使用が規制されて輸入が急減。06年には石綿製品製造が全面禁止された。

  鶴見区の場合は、工場周辺に長年住み、石綿関連の職業についた経歴は無い住民にも健康被害が起きた。環境省と横浜市が詳しい調査の方針を決めたことで、工場が健康被害にどう関係しているのかについても解明が期待されている。

  しかし、石綿が原因とされる中皮腫による死亡例は、横浜市のすべての区で出ている。数値上も鶴見区だけが極端に多いというわけではない。

  県内では他にも多数の事業所で石綿が扱われ、すでに閉鎖したところも多いとみられる。

  輸入石綿の陸揚げ、建材工場、造船所、建設現場などで働いた際に、石綿を吸い込んでしまった被害が知られている。因果関係がほぼ特定された場合、企業側が本人や遺族に対し金銭補償をするケースも出ている。

  鶴見区同様に工場周辺住民の石綿被害が問題になった兵庫県尼崎市では、石綿を扱った事業所を過去にさかのぼって調査し、住所や石綿の使用量、操業期間をホームページで公開している。

  しかし、横浜市の中田宏市長は「全市的に把握するのはなかなか難しい」と、同様の調査実施には消極的な姿勢だ。

  石綿の健康被害問題に取り組んできた社団法人・神奈川労災職業病センターの西田隆重事務局長は「どこにどのような工場があったのかを知らない市民が多い。健康被害の早期発見や、企業責任の追及のためにも、過去の事業所調査が必要だ」と指摘している。

http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000000702270005