記事登録
2007年02月25日(日) 02時20分

2月25日付・編集手帳読売新聞

 「ハケンの品格」というテレビドラマが人気だという。いくつもの難しい国家資格を持っている。時給も高い。夢のような「スーパー派遣社員」と呼ばれる女性が主人公だ◆働き方も多様化し、正社員が当たり前の時代ではない。派遣労働で働く人も250万人を超えている。自身の職場での立場を思いつつ見ている人も多いだろう。労働問題への人々の関心の高まりを示す現象かもしれない◆昨年来、「ホワイトカラー・エグゼンプション」という言葉をよく目にした。どんなに働いても残業代は出ないが、自分で自由に労働時間を設定できる働き方だという。一時は厚生労働省が労働基準法を改正して導入しようとした◆「期日までに一定の成果を出せば遅出も早帰りも自由」だと説明する。だから育児や自己啓発の時間も取れるというが、理想論すぎる気もする。会社が期待するような成果が出なければ寝る間も削って働くしかないし、その場合の賃金はどうなるのだろうか◆宮大工で「技術者の人間国宝」といわれる選定保存技術保持者の松浦昭次さんが、著書の中で「労働基準法ができて年季奉公がなくなった」と嘆いていた。確かに賃金や労働時間の規制があっては、弟子を抱え育てることは難しい◆職人の技を復活させるために、こうした問題にも目を向ける必要がある。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070224ig15.htm