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2007年02月25日(日) 12時23分

「インハウス弁護士」採用進まず 企業など検討1割未満朝日新聞

 企業などに雇われて働く「組織内弁護士」の採用を検討している企業が1割に満たないことが、日本弁護士連合会の調査でわかった。採用しない理由は「顧問弁護士で十分」が72%。司法制度改革による弁護士人口増加は、組織内弁護士の需要が増えるとの予測にも基づくだけに、日弁連は「改革の狙いと現実の採用動向が乖離(かいり)している」と危機感を隠さない。

 組織内弁護士は「インハウス・ロイヤー」とも呼ばれる。法律事務所に所属しながら必要な時に相談に乗る顧問弁護士と違い、企業や官庁の従業員として常時、組織の法的問題をチェックし、解決する役目を担う。

 弁護士は約2万3000人だが、18年までに倍増する見通し。数を増やし、高すぎるとされる弁護士報酬の水準を下げようとするのが経済界の狙いだ。弁護士会内部で強まる懸念に対し、改革推進派が「社会が『法化』され、組織内弁護士の需要増が見込める」と説得した経緯がある。「本当に人口増の受け皿になるのか」は日弁連にとって重大な問題だ。

 調査は06年10〜11月、5252企業、46省庁、849地方自治体に実施。35%の回答を得た。

 結果は懸念をはるかに上回るものだった。回答した企業1446社中、すでに組織内弁護士を雇っている企業は57社と4%のみ。組織内弁護士がいない企業のうち「採用には消極的」が686社と約半数を占め「関心はあるが具体的に検討していない」の600社と合わせると93%が消極的。「募集中」の13社、「募集していないが採用計画はある」の30社の合計は3%にとどまり、組織内弁護士が浸透していない実態が浮かび上がった。

 採用しない理由としては「給与の問題」「現在の法務・知的財産部門などで不自由しない」(各12%)も挙げられた。

 32省庁の回答では「募集中」「採用予定」が合計17%、「すでに在籍」は38%で、企業より浸透度が高かった。ただ655の地方自治体のうち「募集中」か「検討中」は計1%未満だった。

 日弁連は、経済団体との交流会で需要を掘り起こすなどの対策を始める。

http://www.asahi.com/national/update/0224/TKY200702240291.html