リエル氏は駐トルコ代理大使などを歴任し、外務次官を最後に01年に退官した。シリアからイスラエルとの仲介を頼まれたトルコ政府から、相談を受けたのは04年1月。シリア側の交渉代表として、米政府とも近いシリア系米国人実業家を選んだが、トルコ政府はその後、仲介役を降りた。
04年9月、同氏はイスラエル訪問中のスイス外務省の中東担当局長に交渉への支援を要請。スイスのカルミレイ外相(現大統領兼務)が承諾し、全経費をスイス政府が負担して交渉が始まった。
リエル氏は交渉結果を毎回、イスラエルの首相府と外務省に報告した。交渉の場は主にスイスだったが、シリア側がイスラエルに来て外務省幹部と会談したこともある。政府が交渉を止める動きはなかったという。
和平私案が作成されたのは05年8月。イスラエルが併合しているシリアのゴラン高原を返還し、ふもとの水源はイスラエルが管理するなどの内容だった。文言の修正を重ねたが、昨年8月、レバノン紛争の影響で交渉が中断したという。
秘密交渉については今年1月、イスラエルの有力紙ハアレツが特報したが、シリアとイスラエルの両政府は関与を否定した。リエル氏は「表で否定しても、シリアは米政府の経済制裁を早く解除したいから、本気でイスラエルと和平を結びたがっている。イスラエルは消極的だが、政権が動くかどうかは国内世論の行方次第だ」と話した。
同氏によると、イスラエルとアラブ諸国の仲介外交に積極的なのは、ノルウェー、スイス、スウェーデンだという。 日本については「経済援助は積極的だが、仲介外交で何かしたとの話は聞いたことがない。イスラエル、パレスチナ双方と良好な関係を持っており資格はある。試してほしい」と期待を示した。