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2007年02月25日(日) 10時00分

安倍政権 あと2カ月までの怪しい雲行きと闇日刊ゲンダイ

 政局が風雲急を告げている。先週あたりから、にわかに安倍政権がグラついている。
「われわれも驚いている。なぜ、急にこうなってしまったのか」
 官邸スタッフも慌てふためいているほどだ。
 キッカケは、先週末に一気に広まった柳沢辞任論だ。「産む機械」発言のほとぼりが冷めたのもつかの間、「子供2人が健全」だの、「労働者はベルトコンベヤー」だの、相変わらずの失言を続けている。「やっぱりダメだ。予算成立後、代えるしかない」——自民党内から一気に内閣改造論が噴き出してきたのである。
「こうなると、塩崎も代えろ、チーム安倍はみんなダメだ、という話になる。森元首相が『閣僚が首相を尊敬していない』と口火を切り、中川昭一政調会長が『似たような会をたくさん作るな』と塩崎を叱り、塩崎が『おかしいですか』と答えたことまでバクロし、グチャグチャになった。極め付きが中川幹事長の『忠誠心なき閣僚は去れ』発言です。幹事長が居丈高に内閣を叱るのも異例。当然、閣僚からは『幹事長は何様?』の声が出ている。もう政権は末期症状です」(官邸事情通)
 この間、教育への国の関与を巡り、教育再生会議と規制改革会議が真っ向対立するというゴタゴタも露呈。その前には久間防衛相の「米国は間違っている」発言が波紋を広げ、麻生外相の「次はオレ」発言も物議を醸した。6カ国協議では、日本だけがカヤの外に置かれ、何をやってもダメな安倍が鮮明になりつつある。もともと、無能をごまかし、絆創膏でとりつくろってきたガラス細工のような政権だ。ちょっとした亀裂で崩れてしまう。それがにわかに現実になってきたのである。

●安倍の意向をヨソに飛び交う人事情報
「もう党内は、改造しかない、というムードです。その場合、塩崎官房長官更迭は当然として、どこか別の閣僚に横滑りさせて傷つけないようにするとか、後釜には菅総務相を持ってくる案などが公然とささやかれている。柳沢の後任は公明党からとか、安倍首相の意向とは関係なく、人事情報が飛び交っています。コトはチーム安倍の若手と中川幹事長の主導権争いになっている。それだけに、何が起こるか分かりません」(自民党関係者)
 もはや、改造しかなさそうなのだが、政治評論家の浅川博忠氏の見立てはこうだ。
「中川幹事長ら党側は塩崎官房長官らを代えたいのでしょうが、狙い撃ちのような人事をやれば禍根を残す。そう見せないためには、大幅改造しかない。しかし、チーム安倍を総取っ換えすれば、安倍首相の求心力は急低下する。かといって党内バランス重視でやれば、清新なイメージが壊れて、逆効果になる。改造は諸刃の剣ですよ」
 これがプロの常識だ。選挙もないのに通常国会会期中の内閣改造なんて異例中の異例だ。「辞める閣僚がなぜ、予算案の答弁をするのか。国民をバカにしている」(政治評論家・山口朝雄氏)という話になる。あり得ないことが現実論で語られている。そこが末期的なのである。

●「行くも地獄、引くも地獄」という安倍のジレンマ
 おそらく、安倍政権は改造をすれば、ますます、追い詰められていく。改造で人気を挽回するような人材は見当たらないし、むしろ、そこまで切羽詰まっているのか、という見方をされる。
 しかし、このまま改造しなければ、それはそれでジリ貧だ。この内閣の実力はハッキリ見透かされているからだ。
 行くも地獄、行かぬも地獄。自業自得だが、オシマイだ。
「安倍内閣は、社保庁改革、公務員改革、教育再生、憲法改正などを何本もの柱に掲げていますが、どれも有権者の関心は薄い。目玉の『再チャレンジ支援策』もパッとしません。これでは、支持率の回復は見込めませんよ」(浅川博忠氏=前出)
 こうなったのは、結局、小泉構造改革路線を継承しているからだ。自由競争を推し進めれば、必然的に弱者は切り捨てられていく。それなのに、「格差是正」とか取り繕っているのだから偽善だ。それをゴマカすために、「数で勝負」とばかりに改革メニューを提示し、アホみたいに会議を立ち上げ、国民をケムに巻こうとしているのだが、どれも行き詰まっている。その揚げ句が、学級崩壊、内閣改造騒動なのである。

●一気に現実味、「4月ご臨終」説
 こうなると、お坊ちゃん内閣の命運は7月の参院選までに尽きるのではないか。4月には統一地方選がある。福島と沖縄での参院補選もある。4月ご臨終説である。神奈川大名誉教授の清水嘉治氏(経済学)がこう言う。
「安倍首相は中川幹事長に引っ張られ、経済成長を優先させる『上げ潮路線』を突っ走っています。そのせいで労働者の3分の1が非正社員になり、地方も干上がったままです。これで地方選を戦えるのか。安倍首相が小泉構造改革の“負の遺産”にしがみつき、経済政策の転換も図れない限り、地方選や参院補選は、宮崎県知事選の二の舞いになると思います」
 首相官邸は大慌てで、「成長力底上げ戦略構想チーム」とか「子どもと家族を応援する日本重点戦略検討会議」なんて急ごしらえの会議を乱立しているが、見苦しいの一語だ。立正大教授の金子勝氏(政治学)はこう言う。
「日本は6カ国協議でカヤの外に置かれ、安倍首相お得意の拉致問題も八方ふさがり。安倍内閣は、内政でも外交でも完全に手詰まりです。そのうえ、閣僚の忠誠心や閣議での態度が問題視され、首相のリーダーシップまで問われている。結局、この首相の限界が露呈しましたね」
 内閣改造などでごまかさず、首相の首を取り換えないと、自民党は終わりだ。それが分かっているから、最近は麻生外相がその気になり、小泉前首相の再登板説がまことしやかにささやかれている。安倍チャン、ご苦労さまでした。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070225-00000008-gen-ent