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2007年02月25日(日) 00時00分

亡き先輩への思い胸にオペラ上演 同志社女子大朝日新聞

 オペラ歌手を目指しながら、JR宝塚線脱線事故でその夢を断たれた大森早織さん(当時23)=神戸市北区=が卒業した同志社女子大学(京都府京田辺市)の後輩が24日、同大であった卒業公演で、「フィガロの結婚」を上演した。舞台装置は大森さんの両親の寄付で新調され、2人は熱演する後輩たちの姿を、2年前に逝った娘と重ね合わせて見守った。

亡くなった大森早織さんの後輩たちは、オペラ「フィガロの結婚」を熱演した=24日午後、京都府京田辺市で

 大森さんは05年3月、同志社女子大学音楽学科を卒業。同科は約20年前から、卒業公演で「フィガロの結婚」を上演しており、大森さんも2年前にヒロインのスザンナ役を演じた。その後も、同大の卒業生や教員らでつくる音楽学会《頌啓会(しょうけいかい)》の特別専修生として残り、勉強を続けていた矢先に事故に遭った。

 大森さんの両親は昨年5月、「娘が世話になったお礼に」と、同会に約100万円を寄付。同会は「大森さんの遺志を継ぎ、学べることの幸せを感じてほしい」と、古くなったベッドや柱など舞台装置約30点の購入に寄付金を充てた。

 大森さんの母、好美さん(51)は「思いもしなかったが、きっと早織がいちばん望んでいた使い道。早織が様々なことを学んだオペラに使っていただき、本当にうれしいの一言」と話した。

 この日は、オペラクラスを受講している3〜4年の学生ら32人が、講堂を埋めた観客約千人を前に、1年間の練習で磨き上げてきた歌声や演技を披露した。

 好美さんは夫の重美さん(58)とともに、大森さんの遺影をカバンの中に入れて舞台を見つめた。「スザンナの衣装が2年前の早織と重なってこみ上げるものがあった。この伝統を続けていってもらいたい」と笑顔で語った。

http://www.asahi.com/culture/stage/theater/OSK200702240071.html