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2007年02月24日(土) 12時00分

著作権の保護期間延長、反対派の論点オリコン

 著作権の保護期間延長が国際的な趨勢となっているなか、日本でもこの問題について、ここにきて活発な議論が交わされ始めている。昨年発表の『知的財産推進計画2006』にも「検討を行い、07年度中に結論を得る」と盛り込まれ、今年度の文化審議会で具体的な検討が始まるとみられる著作権保護期間の延長問題について、賛成、反対両派の間で交わされている議論の論点とは( 著作権保護期間の国際比較表はこちら )。

 “反対派”の論点の一つに、「70年以上という国は決して多数派ではない」とするものがある。著作権に関する国際条約であるベルヌ条約加盟全158か国中、「70年以上」とする国は68か国であり、半数にも満たないとする主張だ。しかし、著作物の流通量を想像すれば、単に国の数だけで比較することが、まったく説得力のないものであることがわかるだろう。韓国文化コンテンツ振興院の05年の試算では、全世界におけるコンテンツ産業規模の国別1位である米国の占有率は41.7%。2位である日本以下、欧州諸国や中国、韓国が名を連ねる上位10か国の占有率は8割を超え、10か国中「70年以上」とする国だけでも7割近くに達する。

 また、同様に反対派の意見の中には「日本はコンテンツの輸入大国ではあるが、輸出大国ではなく、保護期間延長は結果的に諸外国に有利に作用する側面が大きく、国益に反する」とするものがあるが、これについても協議会による記者懇談会の席上で、日本文藝家協会・三田氏が明確な反論を行った。ぴあ総研発行の『エンタティメント白書 2005』によれば、02年のエンターテインメント関連産業の総輸入額が1兆6562億円だったのに対して、輸出額も1兆4347億円と、大きな差はない。この実態を示した上で、三田氏は、著作権はクリエーター個々の「私権」であり、国家対国家といった構図での損得の問題として考えるべきではないと退けている。

 さらに、ソニー・ボノ法成立の過程でも上がっていた「古いコンテンツほど権利の所在や使用条件が不明確になり、権利処理が難しくなるが、保護期間の延長はその傾向を助長する」とする懸念の声に対しては、協議会を構成する団体それぞれにおける作品情報等のデータベース化の状況を、協議会として把握。それらデータベースとも関連付けた権利情報のポータルサイト構築も検討するとした。
 需要があるにも関わらず権利処理できないために流通させられないといういわゆる“孤立作品”の増大への対策でもあるが、記者懇談会の前日である24日に行われた協議会の第2回会合では、その他、著作権者が著作物の自由利用を認める場合の条件や作品の表示方法についても検討するなど、それら使用者の利便性向上に向けた方策の検討を行うワーキンググループが設置されることも決定している。

 なお、協議会ではこれと並行し、いわゆる「戦時加算制度の撤廃」も併せて主張していく。第二次世界大戦中に日本が連合国側の著作権を保護していなかったとして、連合国民の著作物について、原則約10年分の保護期間を加算する義務を負っている制度だが、「保護していなかった」こと自体、戦勝国、敗戦国とで変わるものではなく、なおかつ同じ敗戦国であるドイツ、イタリアはその義務を実質的に負っていない。この不平等な制度の撤廃を求め、協議会では著作権協会国際連合(CISAC)に対し、解消に向けての理解と支援を求める書簡を送付するとともに、3月に開催されるCISAC理事会等の場でも説明を行っていくとしている。

  著作権保護期間の国際比較表 など詳細はこちらへ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070223-00000023-oric-ent