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2007年02月24日(土) 00時00分

脳血管医療センター4医師書類送検朝日新聞

  横浜市磯子区の市立脳血管医療センターで03年7月、女性患者(53)が内視鏡を使った手術で重い意識障害を負った医療過誤事件で、県警は23日、医師4人を業務上過失傷害容疑で書類送検した。家族が告訴したのは執刀医ら3人だったが、県警は当時の外科部長(55)についても立件対象に加え、責任を問う姿勢を示した形だ。

  同センターの要綱によよると、医師に手術の「経験がない、あるいは少ない」場合については、事前に倫理委員会で審査し、可否を判断することになっている。

  問題となった内視鏡を使って脳内の血腫を除去する手術は、担当した医師3人だけでなく、外科部長も経験がなく、センターとしても初めての手術だった。しかし、外科部長は倫理委員会に諮らないまま、執刀医らによる手術を許可した。

  県警は、今回の手術が倫理委員会に諮るべき内容と判断。「経験が全くないなら、事前に経験者に指導を仰いだり、手術に立ち会ってもらったりするべきだったが、それをしていない。不測の事態に備えるのは当然の義務だったにもかかわらず、怠った」とした。

  さらに、倫理委員会に手術の可否を諮らなかった背景に、外科部長が未熟な医師による手術の危険性を十分認識していた可能性があった、という見方を強めている。

  事情聴取に対し、4人は手術中に脳の血管を傷つけたことは認めているが、手術と障害の因果関係については一部否認しているという。4人はこの手術のために市から停職や減給などの懲戒処分を受け、現在はセンターに勤務していない。

  ■「手術未熟 過失は別」病院側

  横浜市立脳血管医療センターの中川秀夫・管理部長は23日、当時の脳神経外科部長ら4人が書類送検されたことを受けて記者会見に臨んだ。中川部長は「(手術が)下手だということと、過失があったかどうかは別だ」などと語り、手術自体には問題は無かったという見解を改めて示した。

  問題の手術をめぐっては、センターの外部調査委員会が04年9月、手術手技に決定的なミスは無いが、技術レベルの低さは否めず、インフォームド・コンセントも不足したとして、「総体的にみると医療過誤と言わざるを得ない」と結論づける報告書をまとめた。

  中川部長らは、報告書の指摘に沿い、院内手続きを無視して手術が行われたことや、技術が未熟だったことは認めた。

  患者に重い障害が残ったことについては、「民事裁判では手術そのもののミスは争っている。手術で障害になったのか、患者さんの自然経過でそうなったかは本当に分からない」と述べた。

  ■「医師と市は正式謝罪を」入院女性の夫

  女性は同センターに入院したままだ。23日夜、横浜市中区の自宅で、女性の夫(48)は「3年7カ月、家内の人生を奪った医師と、横浜市に対する憤りは忘れたことがない」と語った。

  「経験のない医師が執刀すること、病院では初めての手術であることの説明を受けていれば、手術させなかった。彼らがやったことは人体実験と同じ。だから傷害で告訴した。医師と市には、正式に謝罪してほしい」と話した。

  ベッドで寝たきりの女性に「調子どう?」と声をかけると、瞬きで返事をするという。書類送検について、夫は「満足はしないけど、評価しています」と述べた。

http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000000702240004