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2007年02月24日(土) 00時00分

ダム発言知事迷走/「県民への説明不十分」朝日新聞

 ダム問題をめぐる嘉田由紀子知事の発言が揺れている。「県民との契約」と自身が位置づけたマニフェストで、ダム凍結・見直しを掲げたものの、芹谷ダム(多賀町)について昨年12月議会で「一定程度有効」と建設に前向きな姿勢を表明。2月の県議会では、治水ダムは必要だと訴え始めた。就任7カ月。知事の発言が揺れ、マニフェストも揺らいでいる。

 嘉田知事のマニフェストは「対話と共感」「もったいない」がキャッチフレーズ。三つの緊急提言と五つの基本目標、40の政策提案からなる。

 ダムの凍結・見直しは緊急提言のひとつ。新幹線新駅や廃棄物行政の凍結・見直しと並ぶマニフェストの根幹だ。マニフェストでは「大型公共事業は必ずしも地域経済を長期的に潤すものではない」とし、ダムに否定的な考えを示していた。

 「マニフェストが支持されて私が選ばれた。特に三つの緊急提言は、県民の強い意志が示されたもの。基本姿勢として堅持していく」。初めて臨んだ昨年7月の県議会で、嘉田知事はこう力強く語っていた。

 しかし、その後の発言は次第にダム容認に傾いていく。12月には芹谷ダムの有効性に言及。2月議会では「ダムすべてを否定しているものではない」と答弁して、ダム建設に道を開いた。

 19日の記者会見では、「マニフェストにある『ダムの凍結・見直し』は水害の危険性を県民と共有し、死者を出さず、壊滅的な被害を防ぐ治水対策はどうあるべきか、その学びと対策を練り直したい責任から発したもの」と述べた。しかし、県民への説明は「大変不十分だった」とし、治水に対する考え方と最新データを県のホームページに掲載し、住民との対話を続けていく考えを明らかにした。

 マニフェストの検証について、知事は昨年9月議会で、「今後4年間の政策の達成度合いをもとに県民から評価を受けて総括できる」と述べた。だが、いつ、だれが、どういう手法で検証するかは明示していない。

【知事語録】
【「ダムは劇薬自然大きく破壊」】
【「死者出さぬ治水対策考えた」】

 「治水についてはダム以外の方法(堤防強化、河川改修、森林保全、地域水防強化)、すなわち『流域型治水』により対応します」(かだ由紀子マニフェスト・緊急提言より)

 「マニフェストは県民との契約。多くの県民はマニフェストに示されている政策によって私を選んでくれた。この政策を実現することが嘉田県政の本来の役割であり、県民からの負託」(就任した昨年7月20日、県職員に訓示)

 「ダムは数百億円という大金を短期間に必要とする劇薬、自然を大きく破壊します。ダムに頼らず、自然の恵みを壊さずに水害を防ぐ方法を嘉田は提案します」(同)

 「それぞれの河川改修やダムなどハード対策が一体となった総合的な流域治水を目指す」(昨年7月の県議会で答弁)

 淀川水系流域委員会の休止について感想を問われ、「環境保全と住民意見の聴取というところを狙いにした、今の時代の河川のあり方を求める委員会でした」(11月2日、定例会見で)

 「(芹谷ダムは)ダム以外の方策で同じ治水効果を確保するのは困難」「ダムが一定程度有効」(昨年12月の県議会で答弁)

 「ダムだけに頼らない、生命を守る方法がありますかという問題提起をさせていただいた。ダムすべてを凍結・中止というような流れではないことをご理解いただけたら」(昨年12月21日、定例会見で)

 「マニフェストでの『脱ダム』は、どのような洪水にも死者を出さない観点からダムの効果、ダム建設に対する財政負担、河川環境への影響を考慮し、ダムだけに頼らない治水を意味する」「死者を出さない治水対策はどうあるべきか(考えた)」「公約通りに100%できなかった。しかし方向性は一定程度維持する」(今月19日、会見で)

 県民をだましたのかとの質問に「そう解釈されても仕方ない」。辞職する考えはないかと問われて「即答はしかねる。今やめることのほうが無責任」(同)

【新幹線新駅「中止なら損害責任を」】
【湖南・守山両市長知事に注文・異論】

 栗東市の新幹線新駅問題をめぐり、湖南市と守山市の市長が定例会見などの場で、嘉田由紀子知事に注文をつけた。

 湖南市の谷畑英吾市長は、新駅が凍結か中止になった場合、市の損害分の支払いを県に求めるとする内容の書面を、21日付で嘉田知事あてに送った。

 同市は、JR東海との協定に基づく07年度の建設負担金2700万円を予算案に計上したが、県が割り当ての21億5千万円を計上していない。谷畑市長は「新駅設置促進協議会で話し合う前に、県が予算化しなかったのは遺憾。知事が責任を取らず、関係市にだけ負担を押しつけるのは無責任だ」と批判した。

 守山市の山田亘宏市長は、14日にあったJR東海の社長と知事、栗東市長の3者会談で、新駅推進か中止かの結論を10月末まで延期することで合意したことについて、「先延ばししても建設的な案が出るとは思わない。結局は知事と栗東市長の決断だ」「万が一、中止になれば、(凍結を)言い出した人が責任の一切を持ってほしい」と述べた。

http://mytown.asahi.com/shiga/news.php?k_id=26000000702240003