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2007年02月24日(土) 22時19分

仏の右翼・国民戦線、勢力さらに拡大 自信のルペン党首朝日新聞

 フランスの右翼「国民戦線」(FN)の党大会が24日、北仏の工業都市リールで開幕した。4月22日の大統領選第1回投票に向け、候補となるルペン党首の地位固めを狙う。ルペン氏が決選投票に残った「ルペン・ショック」と言われた前回大統領選から5年近く。移民政策の転換などで「脱右翼」を目指すFNへの支持は衰えを見せず、勢力を拡大しているとの見方さえ出てきている。

フランス北部リールで24日開幕した仏右翼「国民戦線」の党大会で報道陣に囲まれるルペン党首(左)

 25日まで続く党大会の会場には、ルペン党首やゴルニシュ幹事長ら幹部が顔をそろえ、「ルペン、ルペン」の歓声に迎えられた。移民の制限や欧州統合反対、犯罪の厳罰化などの政策を盛り込んだ政策綱領を採択し、結束を訴える。

 ルペン氏は記者団に対して「仏政界は左派も右派も同じ政策を取っている」と既存の政治勢力を批判、綱領への自信を見せた。ゴルニシュ幹事長も「状況は02年と全く同じだ」と自信満々。第1回投票での上位2人が進む決選投票にルペン氏が勝ち残る可能性は、「十分ある」という。

 自信を裏付けしているのは、世論調査の結果だ。FNとルペン氏への支持は昨年以降、一貫して10%台を維持。調査機関Sofresの最新の結果では13%で、サルコジ内相(民衆運動連合=右派)、ロワイヤル元環境相(社会党)に続く3位となった。FN支持者は調査で本音を漏らさない傾向が強く、実際の投票では10%台後半に達する得票が見込まれる。

 今年に入って伸長ぶりが著しいバイル元教育相(仏民主連合=中道)は、同調査で4位。バイル氏はサルコジ、ロワイヤル両氏の票田を侵食しつつあると考えられるため、有力候補3人の食い合いもルペン氏に有利に働くとみられている。

 FNは従来、移民が多く工業化が進んだ仏東部や北部、地中海沿岸で支持を集めてきた。半面、農村地帯の西部や南西部で浸透し切れないでいたが、「欧州統合反対」の強い主張が近年、欧州連合(EU)の農業政策に不満を持つ農民層を引きつけている。

 最近は、移民排斥の主張をあまり前面に出さない「方針転換」で移民層の取り込みも試みている。人種や民族でなく文化の違いを強調し、「フランスの文化や社会と同化することが重要」との論法が、同化を目指す一部の移民出身者の支持につながったとみられる。

 党の宣伝ポスターにも、移民出身者を思わせる女性を起用した。ニュース雑誌のマリアンヌ誌によると、アラブ移民系党員が5年前の1000人から2700人に増えたという。エリートや既存の政治勢力を攻撃し、貧困層や労働者階級の取り込みも目指す。

http://www.asahi.com/international/update/0224/025.html