記事登録
2007年02月23日(金) 00時00分

自民反対で混迷 競馬組合への巨額融資朝日新聞

 県競馬組合(管理者・増田知事)に県と盛岡市、奥州市が330億円を融資する再建案をめぐる議論が、混迷を深めている。県議会では、融資案に理解を示してきた自民が反対に転じ、民主は賛否を明確にしていない。融資案が否決されれば競馬組合は経営破綻(は・たん)し、可決されれば当面は存続する。ただ、いずれの場合も巨額な負債は県民負担となる。県議会の議論で今後、各会派がどのような対応を取るのか。知事選や県議選の告示日も刻々と迫り、その行方が注目されている。

 競馬組合への融資をめぐる議論の様相は、昨年末までとは一変した。

 昨年9月、自民系県議は、民主系県議らが臨時県議会を開き、競馬問題審議を求めたことを批判。同11月の競馬組合議会では、330億円融資を含む再建案を承認した。ところが、今月21日の競馬議会では融資への反対姿勢に転じた。

 自民系県議のなかには「融資に反対しても税負担は避けられない」(ある自民県議)との意見もある。だが、競馬組合の06年度の最終赤字が予想より拡大することから、会派内では「来年度も計画通りにいくとは思えない」(別の自民県議)との声が出ている。

 また、自民推薦の知事選候補の柳村純一氏が「競馬廃止」を公約に掲げており、それと連動する狙いもあるようだ。

 これまで競馬組合の再建案に批判的だった民主の会派内には「競馬組合は廃止が望ましい」(佐々木博県議)との意見がある一方、競馬存続を主張してきた議員もおり、一本化には曲折がありそうだ。

 自民系県議が反対姿勢を明確にしたことで、県議会で融資案が否決される可能性は現実のものとなっている。だが、代替案や否決後の処理に言及する県議はまだ少ない。

 佐々木県議は、廃止で生じる約370億円の損失は「(奥州、盛岡市を含む)組合の構成団体が起債し、応分の負担をすべきだ」という。ただ、県予算調製課は「損失負担のための新規の起債は認められていない」。

 融資案は県議会最終日の3月15日の本会議で採決される見通しだ。否決されると、競馬組合の資金繰りは一気に悪化する。

 まず、3月20日に期限が来る7億円の借金返済が滞る。3月末にはさらに142億円の返済期限が到来し、これも支払えない。

 競馬組合は金融機関に、一時的な返済猶予を申し出るとみられる。だが、県などが融資しない以上、返済原資はなく、事実上経営は破綻する。

 これを受け、競馬組合の構成団体の県、奥州、盛岡市では、議会の会期延長や臨時議会の開催で、競馬組合の破綻処理の審議が必要になる。県議会の場合、3月30日の県議選告示後も議会が開かれるという「異常事態」にもなりかねない。

 また、約370億円とされる損失処理は、利益配分比率通りに県、奥州、盛岡市が負担するのが原則だ。ただ、奥州市の相原正明市長は1月27日の会見で「廃止の時もそうなるかはその時議論する」と述べており、負担割合をめぐる議論は難航も予想される。

                  ◇

 県競馬組合の再建計画案  「赤字となったら即廃止」との基準を設けたうえで、県と奥州、盛岡市が、基金を取り崩して競馬組合に計330億円を融資する。組合はこの資金で、岩手銀行と公営企業金融公庫からの借金を一括で返済。県などの融資は低利で、競馬組合の金利負担は大幅に減る。330億円の融資割合は利益配分比率の「県55%・奥州25%・盛岡20%」に準じるが、2市の財政が厳しいため、県が2市の負担分の一部を肩代わりし、2市は県へ20〜30年で返済する。

http://mytown.asahi.com/iwate/news.php?k_id=03000000702230001