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2007年02月23日(金) 00時00分

改善へ5カ条 軽度発達障害児朝日新聞

  授業中、じっと座っていられない、学校の友だちとかかわるのが苦手、キレやすい——。こうした特徴のある軽度発達障害児の多くが、学校生活や学習に困難を抱えている。4歳〜11歳の子どもたちと親の24家族が集まり、2泊3日の合宿で改善を目指すキャンプが今月中旬の週末、三浦市で開かれた。周囲が「ほほ笑む」「ほめる」といった、子どもとの接し方を意識することが、改善への近道だという。

(小島寛明)

  ♪おーなーまーえ、なーにかなー

  海をのぞむ三浦市内の宿泊施設。ピアノの伴奏にあわせた歌声が、体育館に響く。指導役の女性にマイクを向けられた男の子は、小さな声で自分の名前を答える。「上手に言えたね」。女性にほめられた男の子は、恥ずかしそうにほほ笑んだ。

  歌による自己紹介は、岡山県にある倉敷市立短大の平山諭教授(51)=発達臨床学=が考案したプログラムのひとつ。「集団の苦手な子が人前で名前を言う成功体験は、対人関係を改善するきっかけになる。人は、ほめられたことを繰り返しますから」と説明する。

  プログラムは多彩だ。リズムに乗って体を動かすダンスや、ほかの子にあいさつしたり、近くで一緒にすごしたりして、他人との触れ合いに慣れるプログラムもある。はじめは、集団から外れて1人で過ごしていても、次第に慣れ、自発的に輪に加わる子も出てくる。

  平山教授は15年前から、中国地方や関西で、注意欠陥・多動性障害(ADHD)や、高機能自閉症といった軽度発達障害のある子らを集めたキャンプを半年に1度のペースで開いてきた。参加した親からも好評で、24回目の今回は、初めて首都圏で開いた。教え子の短大生や、卒業生らが、指導役を務めている。

  東京都内に住む小2の男児(8)は、両親と参加した。小1の時、専門医に軽度発達障害と診断された。授業中、席から立ち上がってしまう。思い通りにいかず、友だちをたたいてしまうこともあった。

  「風邪(かぜ)をひくから、はやくズボンをはいて」。父親(36)のちょっとした注意にも、男児は「うるせえ」「ぶっ殺すぞ」と激しい言葉で応じる。すると、父親もつい声をあらげてしまう。

  父親は「子どもが親の顔色をうかがうようになるくらい、強い言葉をぶつけてきた。子どもを変えるには、親が変わらないと」と話す。

  こうした障害のある子を厳しくしかっても、自尊心を傷つけてしまい、かえって逆効果になることが多いという。このため、キャンプは、親向けのプログラムも用意している。

  大人が2人1組になって、1人が「飽きっぽいんです」と自分の欠点を話す。相手は、「好奇心が旺盛なんですよ」と、工夫して欠点をほめる。親たちに、子どもをほめる技術(スキル)を身につけてもらうのが狙いだ。

  平山教授は、様々な子育てのスキルを提唱している。基本は「見つめる」「ほほ笑む」「話しかける」「触る」「ほめる」の五つ。

  軽度発達障害のある子はしかられることが多く、対人不安を抱いていることも少なくない。抑圧を続ければ、暴力的になるといった、さらに深刻な問題に発展するおそれもある。周囲が、五つのスキルを意識して、まず子どもに安心感や満足感を持たせることが、改善への第一歩という。

  平山教授は「けんかの絶えない夫婦や家族にも役立つスキルです」と話す。

http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000000702230005