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2007年02月23日(金) 00時00分

川口園児死傷事故 遺族の願い一歩ずつ朝日新聞

 川口市で昨年9月、園児4人が死亡し17人が重軽傷を負った事故で、遺族らが22日、業務上過失致死傷罪の量刑を10年以上に求めた署名を法務省に提出した。集まった署名は21万あまり。「軽い刑では交通事故は減らない」とのメッセージが込められた。この日、川口市では事故現場周辺の市道で30キロの速度規制を始めるため標識が設置された。幼い命を奪われた親たちの訴えが、現状を少しずつ動かし始めている。

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 提出したのは会社員福地禎明(よしあき)さん(37)、高校教諭盛山哲志さん(26)ら遺族6人。

 21人が死傷した事故で、起訴された業務上過失致死傷罪の最高刑が懲役5年以下であることに疑問を感じた遺族らが呼びかけ、4カ月間で21万4306人分の署名が集まった。

 署名を手渡す際、福地悠月(ゆづき)ちゃん(当時5)の父禎明さんは、「全国から集まった大変重い署名です。よろしくお願いします」と話した。

 「窃盗罪よりも軽い罪で起訴されたことに対し、全国から疑問の声が届いている」。長勢甚遠法務大臣あての要望書には遺族らの思いがこう書かれていた。

 遺族によると、署名を受け取った奥野信亮・法務政務官は「遺族の気持ちは理解します。なるべく法律という形で(改正が)実現できるよう努力したい」と話したという。

 法務省は今月、最高刑が懲役7年の「自動車運転過失致死傷罪」の新設について法制審議会に諮問した。しかし、遺族は「人の命より尊いものはないのに窃盗罪の最高刑(懲役10年)よりも少ないのはおかしい」と訴えている。

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 川口市の園児死傷事故を受けて、県公安委員会は22日、事故のあった現場から半径500メートル以内の市道の最高速度を30キロに規制するため、標識を設置した。標識を立てた路線から順次規制を始める。

 同日、法務省に署名を提出する遺族と同席した岡村幸四郎・川口市長は「速度規制のない生活道路を、30キロまで引き下げてほしい」などと要望した。

 事故現場の道路は幅6メートルの生活道路で当時、制限速度の設定がなく、法定速度は60キロだった。遺族は運転手の男に対し、罰則の重い危険運転致死傷罪の適用を求めたが、車は60キロ以内の速度だったなどとして、男は業務上過失致死傷罪で起訴された。

 川口市は近くの幹線道路の最高速度が40キロに規制されている現実を踏まえ、生活道路を30キロに規制することを要望。県公安委が昨年12月、事故現場周辺の複数の市道の速度を30キロに規制することを決めていた。

 標識は計106本立て、路面標示もする。市は事故現場周辺だけでなく、市内全域の生活道路を一律30キロに規制することを国に働きかけていく方針。

http://mytown.asahi.com/saitama/news.php?k_id=11000000702230002