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2007年02月23日(金) 15時50分

蓮池さん拉致、「対日課」暗躍 名前使い分け来日朝日新聞

 北朝鮮による蓮池さん夫妻拉致事件で、日本人の拉致には朝鮮労働党の「対日課」と呼ばれる部署が深く関与していた疑いがあることが分かった。拉致を指示したとされる2人は当時、対日課の「指導員」。工作員を指揮する立場にあったとみられる。身分を偽って来日したこともあったとされ、警察当局は対日課がほかの拉致事件にも関与していたとみて組織の実態解明を目指す。

 調べでは、対日課は、同党「対外情報調査部(現35号室)」の部署。課長の下に複数の指導員が配属され、指導員が工作員を指揮していた模様だ。

 拉致を指示したとされる通称「ハン・クムニョン」容疑者は、蓮池さん夫妻の拉致事件の前後に少なくとも計5回、貿易代表団の一員などとして来日。「韓明一(ハン・ミョンイル)」など複数の名前を使い分けていたとみられる。商社員などの肩書で入国したこともあり、日本国内の電機メーカーの工場を視察したことが確認されている。日本語も堪能だったという。

 一方、通称「キム・ナムジン」容疑者は来日した形跡はなく、ハン容疑者を補佐する立場だったとされる。ハン容疑者は90年ごろに課長に昇格。キム容疑者も時期は不明だが副課長に昇任したことが分かっている。

 警察当局によると、日本人拉致は、複数の工作員を指導員が指揮する「チーム」で実行していた可能性が高いという。蓮池さん夫妻の拉致にはハン、キム両容疑者の2人の指導員が関与したとされ、警察当局は「プロジェクトごとにチームが合同したり、どちらかがサポート役を務めたりすることもあったのではないか」と推測。全体の人数などは不明だが、「日本語が話せるという語学の問題や秘密保持の必要もあり、限られた人数だったのではないか」と見ている。

 蓮池さん夫妻は拉致後、別々に北朝鮮の清津港から上陸。薫さんが清津の招待所に着いた時、出迎えたのはハン容疑者だった。

 招待所でハン容疑者は薫さんを監視していたが、その後、キム容疑者に交代した。

 祐木子さんも招待所ではハン容疑者に出迎えられたという。

http://www.asahi.com/national/update/0222/TKY200702220366.html