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2007年02月23日(金) 13時20分

ヤマハ発動機部長ら3人逮捕 無人ヘリ対中輸出未遂容疑朝日新聞

 ヤマハ発動機(本社・静岡県磐田市)が中国に軍事転用が可能な無人ヘリコプターを不正に輸出しようとした事件で、静岡・福岡両県警合同捜査本部は23日、外国為替法違反(無許可輸出未遂)の容疑で、無人ヘリを開発・販売していた同社スカイ事業部長で執行役員の内山一雄容疑者(58)と同部社員2人の計3人を逮捕した。3人とも容疑を否認している。合同捜査本部は同日午前から、スカイ事業部など4カ所の家宅捜索を始めた。

 調べによると、内山容疑者らは05年12月、経済産業相の許可を取らずに「北京必威易創基科技有限公司(BVE社)」(北京市)に対し、軍事転用可能な産業用無人ヘリを輸出しようとした疑い。同機は農薬散布などのため噴霧器などの装備が可能で、リモコン操作で高度150メートルまで上昇でき、全地球測位システム(GPS)を搭載していた。

 これまでの調べで、ヤマハ発動機が輸出しようとしたBVE社は中国の人民解放軍と取引していることが分かった。また、ヤマハ発動機が人民解放軍が運営する企業「保利科技有限公司(ポリテク)」にも高性能の無人ヘリを輸出していたことが分かっている。

 内山容疑者は逮捕前、朝日新聞の取材に対して、「警察とは見解が違う。(輸出許可の対象となる)自律航行可能かどうかは経産省が決めると言うが、それでは黒いものを白と言えという、専制君主のようなものではないか。国の権力でそう言われたら手が出せないが、我々はきちんと判断している」と容疑を全面的に否認していた。

 外為法では、20リットル以上の液体などが搭載可能で、自律的な航行能力があるか、操縦者が機体を見なくても飛行を制御できる場合、経産相の輸出許可が必要と定めている。合同捜査本部はヘリに自律航行能力があると見ていたが、ヤマハ発動機が全面否認していた。

 その後の飛行実験などで、機体が遠く離れて操縦者から見えない場合でも、機体にテレビカメラなどを取り付けることにより飛行をコントロールできると判断。「可視外飛行」で立件する方針を固めた。

 外国為替法は軍事転用可能な製品の輸出を規制しており、規制対象品は経産相の個別許可が必要となる。同社は無人ヘリを許可を要しない「非該当」に分類して名古屋税関に申告していた。

 合同捜査本部は06年1月23日に同社本社など20カ所を同容疑で家宅捜索。経産相も同日、同社を刑事告発していた。

http://www.asahi.com/national/update/0223/TKY200702230270.html