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2007年02月23日(金) 10時00分

賃貸契約の“落とし穴”日刊ゲンダイ

 3月、4月の引っ越しシーズンに、賃貸契約の解約トラブルが増えている。「敷金が1円も戻らない」「フローリングとクロスの高額な張り替え料金を請求された」など、借り主の悲鳴が絶えない。多くは納得できないまま、渋々、支払ってしまうのだが、賃貸契約の基礎知識さえ知っていれば、大家の言いなりになることはない。専門家に対策を聞いた。

●ゼロゼロ物件はオトクじゃない
 若い人たちの間で“礼金0、敷金0”の通称「ゼロゼロ物件」が人気だ。確かに入居時の出費は少ないが、トラブルが続出している。退去時に大金を請求されたというのだ。
「ゼロゼロ物件には、悪質業者もいて決してオトクとはいえません。たとえば、退去時に原状回復費用の名目で、家賃1カ月分程度をポンと請求されることも珍しくない。それ以上のこともある。テレビCMで有名なある大手は、退去時に借り主に“現金持参”を通告します。『その場で現金清算してもらうからな!』と言っているも同然で、腹黒さはミエミエです」
 こう言うのは、マンションの退去時に立ち会い、敷金を取り戻す活動を続けるNPO法人「日本住宅性能検査協会」の大谷昭二理事長だ。ゼロゼロ物件は批判が激増したため、巧妙に契約システムを変えた。ただ、大谷氏は「やってることは以前と同じ。借りないのが一番」と切り捨てる。

●鍵の交換費用は大家の負担
 入居時に鍵の交換費用を請求される事例も増えている。茨城県在住のサラリーマンF氏もそのひとり。昨年、大学進学した長男が川崎市内に1Kアパートを借りた際、2万円余りを支払わされた。
「借り主に“安全な空間を与える”のはオーナーの義務。借り主が負担することはありません。法律もそう定めていますし、『オーナーの負担でしょ』とキッパリ伝えるべきです」(大谷氏)
 判例もあるので覚えておくといい。

●キレイに掃除してクリーニング代をゼロに
 ハウスクリーニング費用は、退去者のほぼ100%が請求される。1K、1DKで2万円前後が相場だ。支払うべきなのか?
「常識的にキチンと掃除していれば、突っぱねることもできます。とくに、流し、換気扇、風呂のぬめり、サッシのレールの溝などは念入りにしたい。エアコンはフィルターと外枠のケースをキレイに。これだけでも強気に出ることができます」(大谷氏)
 次の入居者のために付加価値をつける作業は、本来、オーナーの負担なのだ。

●クロスやフローリングは消耗品
 フローリングやクロスの張り替え費用を全額請求する大家もいる。これも交渉の余地はある。
「フローリングのキズや多少のへこみは補修可能で、全面交換よりずっと安上がり。ベッドの足跡も消えます。また、クロス、フローリング、クッションフロアなどは消耗品で、6年たてば残存価値は10%程度。入居者負担割合も1割程度と考えていいでしょう」(大谷氏)
 ただし、たばこのヤニやニオイは話が別だ。社会的に規制が厳しくなっているため、かなり分が悪い。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070223-00000007-gen-ent