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2007年02月22日(木) 01時27分

英に続きデンマークも 親米2カ国「イラク離れ」朝日新聞

 ブレア英首相は21日、イラク南部の治安を管轄する駐留英軍を段階的に撤退させ、数カ月以内に現在の約7100人から約5500人に削減する方針を下院に報告した。英軍管轄下のバスラ周辺に部隊を派遣しているデンマークも同日、8月までに部隊を撤退させる方針を表明。ブッシュ米政権主導のイラク戦争を支持してきた欧州きっての親米政権が、相次いで「イラク離れ」にカジを切ったことになる。

 ブレア首相は下院での報告で、駐留英軍は数カ月以内に撤退を始めると表明。第1陣の撤退は約1600人規模で、今夏以降、さらに部隊を5000人以下の規模に縮小する考えを示した。残留部隊はバスラ空港を拠点にイラク軍の後方支援に回ることになるとしつつ、08年以降も引き続き一定規模の部隊を維持すると留保をつけた。

 またデンマークのラスムセン首相は同日、8月までに現在の約460人の陸軍部隊を全軍撤退させ、代わりに小規模のヘリコプター部隊を派遣する方針を発表。ラスムセン政権はイラクへの武力行使をいち早く支持、有志連合軍に加わっていた。一方、ブルガリア議会は同日、イラクへの駐留延長を承認した。08年3月まで現在と同規模の155人を派遣する方針だ。

 英軍の撤退は、イラク戦争が始まった03年3月以来初めて。開戦から132人の英兵が死亡している。ブレア首相は報告で、撤退が可能になったのは、英国がイラクの復興と治安回復に貢献したあかしだと強調した。今秋までに辞任する意向を表明している首相にとって、イラク戦争を引き金に低迷を続ける与党・労働党の党勢回復につなげたいとの思惑をうかがわせた。

 もっとも、世論の大勢は「撤退は遅すぎる」と冷ややかだ。今年1月の英タイムズ紙の世論調査でも、「イラクからの即時撤退」を求める声が60%で、「イラクの治安が安定するまで駐留」の31%の倍近くに上った。

 イラク戦争に反対した野党第2党の自由民主党のキャンベル党首は首相の報告を受け、「首相はイラクを内戦のがけっぷちに追い込んだ。今年10月までに全軍撤退すべきだ」と指摘した。撤退を歓迎した最大野党の保守党も、早急にイラク戦争を検証するための本格的な調査を実施するよう提案し、全軍撤退後の調査を示唆するブレア政権に圧力を強めている。

http://www.asahi.com/international/update/0222/002.html