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2007年02月22日(木) 00時00分

市、範囲を調整へ 被害の広がり懸念朝日新聞

  JR鶴見駅に近い元建材製造工場の周辺住民に、アスベスト(石綿)の被害が広がっている問題で、環境省は事態を重くみて、国内で4例目となる「健康リスク調査」を周辺住民に対して実施する方針を決めた。調査の開始は4月以降となる見通しで、鶴見区の当時の住民全体を調査の対象にするのか、それ以上に広げるのか、横浜市と環境省が今後、調査範囲を詰める。

(太田泉生)

  健康リスク調査は、横浜市の依頼を受けて環境省が実施を正式に決めるが、調査自体は、環境省から委託を受けた市が実施する。石綿にさらされた可能性がある住民を対象にした大規模調査で、環境省が06年8月に兵庫県尼崎市で実施したのが最初。大手機械メーカー「クボタ」の旧神崎工場の周辺住民が対象になった。同じ年には、佐賀県鳥栖市、大阪府泉南地域でも続けて調査が実施された。

  調査方法は3カ所でほぼ共通で、問診で石綿を吸った可能性があると判断されれば、胸部X線、胸部CT、病理組織検査を受けた。

  発症の傾向や原因といった被害の実態を分析して周辺住民の健康対策に役立てるとともに、職歴や生活歴との関連を把握し、今後の石綿被害救済に生かすデータを集める目的がある。

  JR鶴見駅に近い鶴見区鶴見中央2丁目にあった朝日石綿工業(合併し現在はエーアンドエーマテリアル社=本社・横浜市鶴見区)の横浜工場は、1924年から75年にかけて石綿を使った建材を製造。現在は閉鎖され、公団住宅や鶴見図書館が建っている。

  エー社は05年から、工場周辺の住民が石綿関連の検診を受けるための費用を負担。これまでに56人が受診し、このうち、工場跡地から半径約50メートル以内に住む28人が胸膜肥厚斑(ひこうはん)(プラーク)と診断された。

  この結果を受け、横浜市が今月、28人について診断した病院に問い合わせたところ、24人は、本人か家族が石綿を扱う職業に就いたことはなく、日常生活で石綿を吸ったとみられる。工場が原因であれば被害がさらに広がる可能性があるため、市は本格的な実態調査が必要だと判断した。

  残り4人は、本人か家族が石綿を扱う職業に就いており、本人が職場で石綿を吸い込むか、家族が持ち込んだ衣類などについた石綿を吸った可能性があるという。

  胸膜肥厚斑は、肺の表面を覆う胸膜が厚くなる病変で、石綿を吸った人に特有の現象。それ自体は自覚症状がない場合が多いが、将来的に肺がんや中皮腫になる危険性が指摘されている。

  エーアンドエーマテリアルの担当者は「調査で必要なことには協力する」と話している。

http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000000702220005