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2007年02月22日(木) 00時00分

8期32年「体力限界」蕨・田中市長引退へ朝日新聞

◇「市民に支えられた」 合併破綻「単独運営に道」

 8期32年——。全国で2番目の多選市長となっていた蕨市の田中啓一市長(80)が21日、体力の限界を理由に、定例記者会見の場で、今期限りでの引退を表明した。課題だった川口、鳩ケ谷両市との3市合併は破綻(はたん)したままだが、「当面、単独運営の見通しをつけた」などと話した。

 田中氏は、就任当時から毎月一度、市民との面会日を設けてきた。この日の会見で、「市民の声を市政に生かしたかった。市民の力にも支えられた32年間でした」と振り返った。

 蕨市は市域が狭く、全国有数の人口過密都市だ。田中市政の特色は地域作り、市民同士の交流促進に力を入れたこととされる。各地域に早くから公民館を整え、近年の小型コミュニティーバスも人気だ。広大な工場跡地を防災公園にもした。

 3市合併が争点だった前回の市長選では「(合併後に)市長を辞めるため」として立候補した。市民の高齢化が進み、開発の余地も少ないため、「最大の行財政改革の合併を果たして引退する」と訴え、5人の混戦を勝ち抜いた。

 しかし、市名問題から合併は破綻。田中氏は当時、3市法定合併協議会の会長を務め、協議事項の最後の課題が新市の名称だった。「川口市」か「武南市」か、決選投票で3票差で武南市と決まり、反発した川口市が離脱した。

 ただ、その後の市政運営で単独運営の経営戦略プランを策定した。「将来への道筋はつけたが、合併問題が再燃するかもしれない。先頭に立つ気力、体力もないので次の人にお任せする」

 同市長選の投開票日は6月3日。元共産市議の頼高英雄氏(43)が立候補を予定し、ほかに候補者擁立の動きがある。

http://mytown.asahi.com/saitama/news.php?k_id=11000000702220002