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2007年02月22日(木) 01時35分

2月22日付・読売社説(2)読売新聞

 [放送局不祥事]「『再発防止策』を実効あるものに」

 テレビ各局とも、これで胸をなで下ろすわけにはいかないのではないか。

 捏造(ねつぞう)など番組不祥事を起こした放送局に対する総務省の新たな行政処分案のことである。

 総務相が放送局に再発防止計画の提出を求め、意見を付けて報告内容を一般に公表する制度になりそうだ。今国会に提出する放送法改正案に盛り込まれる。

 罰則はない。だからといって要請を無視したり、何の対策も講じないようだと、いずれ国民から厳しい批判を浴びることになるだろう。

 現在は、厳重注意や警告など法的拘束力のない行政指導と、放送局の電波使用を一時制限する「停波」や免許取り消しといった厳しい行政処分との間に、大きな開きがある。

 その中間の処分案を探る中で、当初は強制力を伴う「業務改善命令」の導入も検討された。銀行、保険会社など金融機関に対する金融庁の処分と同じだ。

 「課徴金」の議論もあった。米国では連邦通信委員会(FCC)が、番組不祥事に高額の罰金を科している。3年前、スポーツ中継の会場で女性歌手が胸を露出させてしまった問題では、20の放送局が計55万ドルの支払いを命じられた。

 一方で、「放送局の表現・報道の自由を侵さないよう配慮すべきだ」との意見も多かった。業務改善命令で、対象となる不祥事や命令の内容を拡大しすぎると、番組制作の現場を委縮させる恐れがある、という指摘もあった。

 結局、総務相が放送局に報告を「求める」という穏やかな形に落ち着いた。

 公権力による「命令」ではなく、放送局の自主的対応を期待しての「要請」である。要請を受けた放送局は、真摯(しんし)に再発防止策を練り、それを実効あるものにしていく努力が必要だろう。

 残念なのは、放送局側の自浄能力が不足しているように映ることだ。

 テレビ東京の正月放送の健康情報番組でも捏造が発覚した。TBSの情報番組でも、行きすぎた表現や論文の無断使用があったことが明らかになっている。

 関西テレビの「発掘!あるある大事典2」捏造問題を受け、総務省が民放15局とNHKに事情を聞いたところ、ほとんどの局が制作会社の取材やナレーション原稿の放送前チェックを怠っていた。

 制作会社が孫請けに出す際、局の承認を必要としていたところは、わずか3局だった。問題を起こした制作会社と「一定期間または二度と契約しない」という局も6局にとどまっていた。

 信頼回復のために何をすべきか。今、業界を挙げて議論すべき時だろう。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070221ig91.htm