記事登録
2007年02月21日(水) 00時00分

1ミリグラム ダイエット大作戦朝日新聞

 プロペラやモーター、電池まで付いているのに、1円玉より軽い0・88グラム——。インドア模型飛行機軽量化の日本記録を作った三好市三野町の内装店経営、小原敏秀さん(50)の次なる目標は、米国記録の0・715グラムだった。ところが、今月になってロシアで0・67グラムに成功した人が現れた。「世界3位になっちゃいました」。苦笑いしながらも、1ミリグラム単位の究極のダイエット成功に向け、新たな知恵を絞っている。

(三浦宏)

 貞光工業高校電気科を卒業、火災報知機販売の営業をしていたが、父の病気を機に実家の内装店を継いだ。

 最初に興味を持ったのは「マイクロマウス」。迷路を自分で動き回る自立型ロボットねずみで、最短ゴール時間を競う。最初は完走もできなかったが、数年後に全国3位に。おもちゃメーカーから声がかかり、紙に線で書いた迷路をたどる商品の開発に協力した。

 次は「ロボット相撲」。これは初の全国大会で優勝、100万円をもらった。だが、競技人口が増えるにつれ、素早い動きや技で相手を倒すより、土俵に吸い付かせる装置で倒れにくくして、力比べをする戦い方が主流になり、工夫する興味が薄れてしまった。

 05年8月、超小型のワンチップマイコンを使った「ラジコン」飛行機の作り方の本を買ったのが、模型飛行機に転身するきっかけとなった。何機か作っているうちに、1・60グラムができ、「1グラムを切りたい」と思うようになった。

 モーター0・25グラム、電池0・50グラム、赤外線の操縦信号を受けるセンサー0・35グラム……。部品をそのまま使えば、それだけで1・10グラム。機体、プロペラ、マイコン、方向舵(ほうこうだ)を動かすコイルの重さも加わる。宝石用の計量器を前に悩む日々が続いた。

 軽量化に挑んでいる愛好家は全国に20人ほど。ブログで情報交換している。まず、東京の人が0・97グラムに成功した。その2週間後の昨年6月、地元の人が阿波踊りの練習をしている三野体育館の隅で、小原さんの0・88グラム機が、ぞめきのリズムに合わせて、チョウのように右に左に舞った。

 部品を覆うプラスチックなど削れるものは徹底的に削り、センサーの重さは元の10分の1だった。フレームは直径0・3ミリのカーボンを曲げたもの。日本記録のうわさを聞きつけ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の空気力学研究グループのメンバーも、話を聞かせてほしいと訪ねてきた。

 挑戦は続いた。米国の0・715グラム機は、小原さんが0・13グラムまで軽くした機体を、半分の0・065グラムに収めているらしい。モーターの軸を鉄からカーボンに変えたり、ハンダより軽い接着剤を使ったり、改良を続け、世界記録をめざしていた。

 そんな時、ロシアの記録が飛び込んできた。驚いたことに、米粒ほどのモーターを完全にばらして、カバーまで取り去り、0・11グラムまで軽量化しているようだ。「相手がやせ形なら、私のはまだ肥満体形。いずれも部品は同じ。アメリカ人やロシア人にできて、日本人にできないわけはないはずです」

http://mytown.asahi.com/tokushima/news.php?k_id=37000000702210003