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2007年02月20日(火) 00時00分

残業代規制範囲あいまい 労組側、拡大解釈を懸念 東京新聞

 「残業代ゼロ制度」との反発を受け、七月の参院選をにらみ、政府が今国会への法案提出を見送ったホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間の規制除外制度)。この制度をめぐっては「残業代がなくなると、長時間労働を一層助長する」と反対する労組側と「仕事の成果で評価する環境が整い、仕事と生活のバランスが実現する」として導入を求める経営側とが、正反対の主張を繰り広げている。(新開浩)

 労使双方の議論がかみ合わない原因は、制度が適用される対象者の線引きがあいまいだからだ。

 厚生労働省がまとめた規制除外制度の案は、対象者を(1)企画開発部門など、労働時間で成果を評価できない職種(2)勤務時間を自由に決められる(3)管理職に近い権限と年収を得ている−労働者に限定している。

 ただ「管理職に近い権限と年収」がどの程度を指すのかは明文化されていない。

 厚労省は、与党から具体的な年収の説明を求められ「九百万円以上」との見解を示したが、経営側は「年収要件は柔軟にし、労使にゆだねるべきだ」と譲らない。実際、日本経団連は当初、年収要件を多くのホワイトカラーが対象になるよう「四百万円以上」にするよう求めていた。

 民間シンクタンク、労働運動総合研究所の試算では、規制除外制度の適用対象を年収四百万円以上と想定すると、残業代とサービス残業代のカットで一人当たり年間百十四万円、千十三万人の対象者全体では十一兆六千億円が削減されるという。

 このため労働側は「管理職に近い」という理由で、対象者の範囲が拡大解釈されることに懸念を示している。

 安倍晋三首相は、十五日の国会答弁で「国民の理解を得ながら取り組むべき課題であり、今後も検討する」と明言、規制除外制度の導入を断念していない。

 また、今国会には、規制除外制度の対象とならない労働者に対し、現行25%の残業代割増率を引き上げるための法案が提出される。

 割増率が引き上げられれば、人件費増の「見返り」として、経営側が除外制度の導入を一層強く求めるのは確実。参院選が終われば導入に向けた議論が一気に高まるとみられる。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kei/20070220/mng_____kei_____002.shtml