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2007年02月20日(火) 22時45分

「お願い」から「約束」へ 首長選マニフェスト解禁朝日新聞

 公職選挙法改正案が21日、参院で可決・成立する見通しとなり、4月の統一地方選から首長選挙でもマニフェスト(選挙公約)が配れることになった。マニフェスト推進派の首長らは「地方の選挙が『お願い』から『約束』に変わる大きな一歩」と歓迎する。ただ、真のマニフェスト選挙になるには課題も山積している。

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 岐阜県多治見市は、同改正法案が成立後の26日に開会する市議会で、ビラ作成費を公費で負担する条例案を提案する。4月の同市長選に間に合わせるためだ。

 負担額は国政選挙で選挙用ビラとして公費負担する単価(1枚7円30銭)に準じる予定だ。仮に同市長選で配布可能な1万6000枚を刷ると、候補者1人当たり約11万7000円が市の負担になる。

 同市は、市長選や市議選でマニフェストが配れる「構造改革特区」を、05年度から計4回申請。総務省に「対応不可」とそでにされながら挑戦し続けた。今期で引退する西寺雅也市長は「マニフェストの質がこれまで以上に問われてくるだろう」と後続に期待する。

 4月の知事選に立候補表明した神奈川県の松沢成文知事も、さっそく同県で条例化に向けた準備に取りかかるという。

 前回知事選では、選挙前に確認団体「神奈川力をつくる会」としてマニフェストを作ったが、「誰」が「どの選挙」に立候補するのか明記できなかった。名前を入れると公職選挙法が禁じる「事前運動」に抵触するためだ。今回は名前を記したマニフェストビラを作るが、「A4判1枚という分量だと、一部の政策しか紹介できない」。深く政策を訴えるには限界があると不満げだ。

 こうした動きは、しかし、まだ少数派。早稲田大学マニフェスト研究所の林紀行事務局長は「統一選までに条例をつくる自治体は、日程や財政の都合で少数にとどまるのではないか」とみる。条例化できない自治体では、作成費は全額自己負担になる。

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 配布が可能になったマニフェストだが、生かせるかどうかは候補者たちの姿勢による。

 増田寛也知事が03年の知事選でマニフェストを掲げ注目を集めた岩手県。自身は今知事選に立候補しない増田知事は今月9日、マニフェスト並みの詳細な政策項目を示し、後進にハッパをかけたが、肝心の立候補予定者の動きは低調だ。主な3候補者のうち、自民の推薦候補は公約発表したが数値は示していない。民主、共産の推す2候補は選挙本番には間に合わせる予定だがまだマニフェストは出していない。

 今年2月の愛知県知事選で現職相手に善戦した石田芳弘・前犬山市長はローカルマニフェスト推進首長連盟の元共同代表。「首長の多くはマニフェストが現状の政策批判につながると考え、活用に否定的だ」とし、首長や候補者が「必要性や役割を理解しないと今回の法改正も単なる制度で終わる」と話す。また、候補者が一方的に発表するだけでなく、マニフェストを基にした公開討論会を重ねないと中身は深まらないと指摘する。

http://www.asahi.com/national/update/0220/TKY200702200496.html