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2007年02月20日(火) 00時00分

架空団体名で図録販売/裏金作り赤字補てん朝日新聞

 図録の販売や入場券の販売代金をめぐり、県立芸術会館で不正経理が行われているとする内部通報があった問題で、「調査検討委員会」(委員長、深道春男・大分大学教授)は19日、調査結果を報告書にまとめ、深田秀生・県教育長に提出した。本来は非売品の図録を実体のない団体名で勝手に販売し、図録作成費の赤字の補てんや、入場者数の水増しなどに充てていたことが判明。販売代金もこの団体名義で口座管理し、会計監査などもまったく行われていなかった。販売代金が事実上、「裏金」として使われており、悪質な不正経理として、県教委は近く関係者の処分をする。

 調査委は5回にわたって、内部通報者や当時の会館職員、県教委文化課長ら関係者8人から事情を聴き、取引業者や銀行からも帳簿のコピーや振り込み依頼書などを取り寄せて調べたという。

 図録は、78年1月の同会館の開館当初の展覧会(78年1月開催)から、本来は販売を目的としない「非売品」として、展覧会を開催する際に、県予算で作成することになっていた。

 しかし、報告書によると、この当時から01年9月まで、同会館は「県立芸術会館協力会」という団体名で、この図録を勝手に販売していた。

 「協力会」の事務は、同会館の総務課職員が担当。「協力会」名義の銀行口座も開設して、販売代金も管理していた。通帳などの記録が残っている98年11月〜01年9月では、代金収入として約130件、計70万円の入金があり、約150件の出金も確認されたという。

 ところが、この「協力会」の代表者や構成員は不明で、予算や決算も組まれたことはないうえ、監査も行われていないなど、「協力会」には実体がないことが判明した。

 さらに、図録の販売代金を県に納めることもせず、図録の作成予算の不足分に充てていた。また、展覧会の入場者数が予想を下回って水増しした際、その分の入場者収入と偽って販売代金の一部を流用して県に納める不正経理もしていた。

 図録作成予算の不足や入場料収入の低迷は通常、補正予算を組んで対応するが、深道委員長は「予算編成手続きが面倒で、プールしていた販売代金で処理したのではないか」と解説した。

 一方、内部通報で「通し番号が無い入場券が存在する」と指摘された点については、01年1月〜2月に開いた「ロバート・キャパ賞展」の入場券に該当があった。調査委の調べでは、同会館の一連の不正経理の中で、私的流用は見当たらなかったとしている。

◆県教委、公表後回し
 資料 期限前に廃棄

 県立芸術会館による不正経理問題は、02年10月に、おおいた市民オンブズマンが最初に県教委に指摘した。この時、会館側は同月中に内部調査を行って県教委に報告したが、県教委の対応のまずさや不透明さが、不正実態の解明を遅らせたといえる。

 調査委は、県教委や会館のこれまでの対応も調べたところ、02年当時の県教委が問題の公表を後回しにして放置したうえ、不正経理問題解明には欠かせない資料である「協力会」名義の口座の通帳などを廃棄していたことも分かった。

 02年当時、県教委などがこの問題を公表しなかったことについて、調査委の調べに対し、県教委の関係者は「会館が高額の屛風絵を議会の議決なしに購入していた問題が同時期に発覚し、この問題への対応を優先しているうちに放置された」と釈明したという。

 一方、県教委は会館からの内部調査報告を受けて、00、01年度の会館総務課長から事情聴取した後、提出された通帳などの関係書類を段ボール箱に詰めて県教委文化課の会議室などに保管していた。

 ところが、昨年6月、文化課長が「すでに解決済みの問題」と勝手に判断し、「協力会」の通帳などの資料を、保存年限が残り、まだ廃棄できないにもかかわらず廃棄処分していたという。

http://mytown.asahi.com/oita/news.php?k_id=45000000702200005