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2007年02月20日(火) 00時00分

中皮腫、住民2人死亡朝日新聞

  アスベスト(石綿)を使った建材を製造していた横浜市鶴見区の旧朝日石綿工業横浜工場(1975年まで操業)の周辺住民2人が、アスベストが原因とされる中皮腫で死亡していたことがわかった。この工場周辺の住民で中皮腫による死亡が判明したのは初めてで、調査した団体は「工場の影響の可能性が高く、行政が責任を持って調査するべきだ」と指摘している。

(太田泉生)

  アスベスト問題に取り組む社団法人・神奈川労災職業病センターによると、鶴見区豊岡町の女性(当時72)が89年に、元横浜市職員の男性(当時61)が03年1月にそれぞれ中皮腫が原因で死亡した。昨年から今年にかけ、家族の申請で2人とも石綿被害者救済法の認定を受け、救済給付を受けている。

  朝日石綿工業(合併し現在はエーアンドエーマテリアル社)横浜工場は、JR鶴見駅に近い鶴見区鶴見中央2丁目にあり、1924年に操業を開始。75年まで、アスベストを使った建材などを製造していた。

  センターによると、女性は工場から約100メートル離れた鶴見区豊岡町に1945年から住み、89年に死亡した。主婦で、夫も含め、アスベストを扱う仕事に従事したことはなかった。

  一方、男性は60〜69年に鶴見区内に住み、60〜73年は、工場から約500メートル離れた鶴見区役所に勤務していた。男性も、アスベストを扱う職業歴は無いという。

  旧朝日石綿の工場を巡っては、エー社が元従業員と工事作業員の追跡調査を実施。エー社によると、各地の工場で計32人が、アスベストが原因の中皮腫や肺がんで死亡していた。

  旧横浜工場の周辺住民については、エー社が費用を負担して検診を実施。受診した56人のうち、工場から半径約50メートル以内に住んでいた28人が、アスベストに起因する病変、胸膜肥厚斑(ひこうはん)(プラーク)と診断された。

  新たに明らかになった周辺住民の死亡例について、エー社石綿対策室は朝日新聞の取材に対し「事実関係をこれから確認する」と話した。また、胸膜肥厚斑の28人については「因果関係は明らかではないが、当社でもアスベスト製品を製造していたので、全面的に否定もできない」との認識を示した。

  一方、センターの西田隆重事務局長は「工場から飛散したアスベストが原因となった可能性が高い」と指摘した上で、「原因企業が家族に補償をするべきだ。また、被害は広がる可能性があり、行政が調査するとともに、過去、他にアスベストを扱った工場がどこにあったかも公表する必要がある」と話した。

http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000000702200003