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2007年02月19日(月) 00時00分

就職サイト今や必須 最後はやっぱり自分の足で 都内で開かれた合同会社説明会に詰めかけた学生たち 東京新聞

 梅の花がほころび始めるころ、大学生らの就職活動も本格化する。会社情報や就職説明会、OBの体験談などの情報収集は、いまやインターネットなしではあり得ない。“シュウカツ”(就職活動)に追われる現役学生らに、その実態を聞いた。 (ルポライター・宇津木聡史)

 「就職活動は大学三年の秋ぐらいから始めるが、最初にすることは就職サイトへの登録。ぼくの周辺ではみな登録している」。第一希望の金融系企業に就職が決まった明治大四年の大堀匠さんはそう言う。

 就職サイトとは、企業の情報を集めたホームページで、マスコミ系企業などがそれぞれ独自に立ち上げている。最大手はリクルートが運営する「リクナビ」で、登録会員数は公称約六十万人。リクナビの前川孝雄編集長は「この数字は就職活動をする全国の学生の数とほぼ同じ。もはやリクナビは就職活動者のインフラ」と胸を張る。

 いまの就職活動はネットなしには成り立たない。前川編集長は「企業の中にはネットでしか応募を受け付けないところもある。これで企業も作業効率を上げている」と指摘。大堀さんも「企業情報を就職サイトで見るほか、検索サイトに会社名を入力してヒットしたホームページを次々に見る。本やパンフレットなどはほとんど見ない。情報が古いし、たいていネットで見られるから」と言う。

 立教大三年の長藤仁美さんは、すでに二十数社に接触。「サイトからボタン一つで申し込める。自分のプロフィルを送れば、資料が来たり、会社説明会の通知が来たりする」と、その利便性を実感。就職サイトには自己分析のサービスもあり、長藤さんは自己PRの文を書くのに役立てている。「でも、企業の人や母校OBに実際に会うことも大切。ネットでは見えない社風や企業風土が分かる」とも指摘する。

 希望の会社が見つかると、次はネットで筆記テストや面接の内容を調べる。大堀さんは「昨年受験した人の情報だけでなく、二日前に面接を受けたなどというホットな書き込みもあって役立った」と言う。

  ◇   ◇

 リクナビが東京都江東区の東京ビッグサイトで開催した、合同企業説明会をのぞいた。主催者によると、一月二十九日と三十日の二日間で、計千社以上の企業が参加、約四万三千人の学生が詰め掛けた。

 青山学院大三年、斉藤知彦さんは「こういう説明会で得られる情報とネットの情報は大差ない。でも、企業ブースに行くと会社の雰囲気が分かるし、質問もできる。それと、どんな学生が受験するのかもわかる。ネットと足の両方で集めた情報が大切」と言う。

 富士通のブースでは同社人材採用センターの松村航太さんが「ネットで情報を広く発信でき、これまで関心を示さなかった学生も応募してくれる。ただ、企業側からすれば本気の学生がどれくらいいるのかがつかみ切れない。こうした説明会を開くと、本当に入りたいと思っている学生がどんな人物で、どのくらいいるのかが見える」と、説明会の役割を評価する。

 前川編集長は「ネットによって就職活動の窓口は広がったが、そのあとの書類審査や面接などの選考過程は以前と同じ。ネットで流布される個人発信の情報をうのみにする学生がいるのが心配。ネットで情報を集めたら、会社訪問や説明会などで人事担当やOBなどの社員に直接会って志望企業を絞り込むことが大切。最後はやっぱり自分の目や耳が頼り」と助言する。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/dgi/20070219/ftu_____dgi_____001.shtml