記事登録
2007年02月19日(月) 09時52分

告発外部窓口、国の機関は3省庁 通報者保護進まず朝日新聞

 内部告発者を報復人事などから守る公益通報者保護制度の一環として、通報を促すために設置に努めることを合意している弁護士ら第三者の「外部窓口」をもつ国の行政機関が、内閣府、総務省、金融庁の3府省庁にとどまっていることが朝日新聞の調査でわかった。警察庁と海上保安庁、農林水産省は内部窓口すら職員に積極的に広報していなかった。内閣府は行政機関のコンプライアンス(法令順守)推進を掲げて自治体に態勢整備を求めているが、足元の中央省庁の不備が明らかになった。

 国務大臣がいる1府12省庁(国家公安委員会は実務を担う警察庁)と、それぞれの外局にあたる21庁・委員会の計34機関に文書や電話で尋ねた。

 調査によると、1府12省庁のすべてが、公益通報者保護法が施行された06年4月までに、職員が通報できる内部窓口を設置。21の外局のうち金融庁や公正取引委員会、国税庁など7機関は独自の内部窓口を設けていたが、林野庁や消防庁など残る14機関は所管省庁に窓口を一本化していた。

 このうち、外部の弁護士事務所にも窓口を設置していたのは、内閣府、総務省、金融庁の3府省庁だけだった。外務省は外部窓口を持たないが、調査を担当する「監察査察官」に同省に勤務する検事や公認会計士を指定。「外部の弁護士と同様の公正性と透明性を確保している」(同省)としている。

 残る30省庁・委員会では、ほとんどが人事や総務担当課に通報窓口を置いており、課長級職員ら「身内」が調査責任者になっていた。外部窓口を置かない理由については、「通報自体がない」(厚生労働、農水省)、「予算の関係」(防衛、環境省)などと回答。今後についても「状況を踏まえて判断したい」(財務省)と述べるにとどまっている。

 通報の件数は昨年12月までに計49件で、内訳は、外務省31件▽内閣府10件▽総務省3件▽法務省2件▽社会保険庁2件▽海上保安庁1件。外部窓口かそれに準じる態勢をもつ3府省が約9割を占める一方で、内部窓口のみの31省庁・委員会のうち27機関は「通報ゼロ」だった。

 通報内容については、外務省が「内容は明らかにできない」、海上保安庁が「調査中」としている以外は、不正の発覚や処分に結びつく有益な内容はなかったという。

 また、農水省と警察庁、海上保安庁は法施行時に文書で通知した後は、窓口の電話やファクシミリの番号、メールアドレスなども職員が直接人事部門などに問い合わせないとわからない態勢になっていた。

     ◇

 〈キーワード:公益通報者保護法〉 企業や行政機関の職員らが、勤務先や報道機関などに組織の不正行為を告発したことを理由にした解雇などの不利益処分を禁じた法律で、06年4月に施行された。内閣府は施行前の05年7月、内部窓口に加え、弁護士事務所など外部窓口の設置にも努めることを各省庁と申し合わせた。47都道府県や15政令指定市では、昨年12月までに計14自治体が外部窓口を置いている。全国知事会は自治体の顧問弁護士らを除いた第三者の窓口設置を各都道府県に求め、制度の整備状況を毎年公表することを決めている。

http://www.asahi.com/politics/update/0219/001.html